基準地価は下落 買うならいつ?
「逆に、首都圏では川崎や船橋、浦和、川口など郊外の利便性が高い駅の周辺では、物件を物色する動きが激しくなっています。テレワーク浸透で、郊外の住宅街に暮らす人が都心部のオフィスではなく最寄り駅の周辺で過ごす時間が多くなるだろうという見立てですね。実際、物件の成約も相次いでいますが、取引価格はまださほど上昇していません」
郊外の駅周辺のテナントビルでは、従来のような「事務所」から、コワーキングスペースやサテライトオフィスに改装する物件も出てきているという。テレワークで都心部に通わないが、自宅では仕事をしにくかったり、気分転換したりしたい人向けの需要を見込んだものだ。こうした物件も価値を上げるかもしれないという。
気になるのは、こうした物件への投資を始めるタイミングだ。
国土交通省が公表した2020年7月1日時点の基準地価は、住宅地、商業地、工業地などを合わせた全用途の平均で、前年比で0.6%下がり、3年ぶりに下落した。2019年までは、東京五輪・パラリンピックの開催もあり、主に都市部でインバウンドの拡大を見込んでホテルや商業施設の開発が地価を押し上げてきたが、コロナ禍で「反転」が起き始めたように見える。
が、訪日外国人客はコロナ禍でほぼいなくなった。収束が見通せないなか、地価の下落傾向は郊外や地方でも強まる恐れがある。
「インバウンドを見込んで大量に開業したホテルや『民泊』などの簡易宿舎は厳しい状況で、売りに出ているものも多いです。が、これらを買い取ろうという動きが2020年度内に出てくると私は見込んでいます。なぜならインバウンドはまた戻るから。新型コロナはいずれ収束します。インバウンドも一定数は戻るでしょう」
牧野氏のもとにも、ビジネスホテルや、個人投資家でも手を出せそうな民泊などに関して、多くの問い合わせがあるという。が、牧野氏は「今はまだタイミングとしては早い」と語る。
「インバウンドが2019年の水準に戻るにはあと2~3年はかかるでしょうが、その頃には価格がまた大きく上昇する可能性がある。かといって今はまだインバウンドがいないので、宿泊客もおらず、利回りが悪い。コロナ禍に耐えてきたホテルの一部で『限界』を迎えそうな、2021年の2~3月が『買い場』だと私はアドバイスしています。なので今はまだ待つべきです」