月曜日からの3日間は銀行員、木・金は副業やビジネススクール通い――。そんな働き方を実現できる制度をみずほフィナンシャルグループ(FG)が導入する。
希望すれば、週休3日や4日で働けるというものだ。「体のいいリストラでは」と懐疑的な行員もいるが、「人件費を人単位ではなく時間単位で削りつつ、行員の自己実現を促すうまいやり方」と評価する声も。年功序列や終身雇用という日本型雇用の典型と言えるメガバンク。「新しい働き方」に変わるのか。
週休3~4日→週休2日も可能 自営での副業・兼業も想定
「週休3日・4日制」は2020年10月6日、メガバンクの代表らが登壇したシンポジウムで、みずほFGの坂井辰史社長が明らかにした。希望者は、土日に加えて毎週決まった曜日を休みにできる。給与は週休3日なら従来の週休2日の8割、週休4日の場合は6割に減る。
労働組合との合意を経て、早ければ2020年12月からの導入をめざす。みずほFGは広報担当者を通じて、制度の狙いについて、次のようにコメントした。
「(企業として)強くなっていくには、社員1人ひとりが『なりたい自分』に向けて専門性を深め、『社内外で通用する力』をつけていくことが必要と考えており、会社としても社員のキャリアデザインを徹底的に支援していく考えです。こうした考えの中、より一層、社員が働き方を自律的にデザインし、モチベーション高く働いていけるよう、働き方の選択肢を拡充するものです」
制度の利用者は増えた休日を生かして、大学院やビジネススクールに通ったり、育児や介護と仕事を両立したり、みずほFGが2019年から「解禁」した副業・兼業に充てたりすることを想定しているという。ただし、みずほFGでは自営や起業は認めているが、他社に雇用される形の副業・兼業は認めていない。
有価証券報告書によると、2020年現在のみずほ銀行の平均年収は735万円(平均年齢は38.2歳)。単純計算で、週休3日なら年収は588万円、週休4日なら441万円となる。副業・兼業であれば、1日あたり3万~4万円の収入を継続的に得られれば、週休2日制の時と同レベルの年収を確保できるということだ。
ちなみに、週休3日・4日制度を利用した後、希望すれば再び週休2日制に戻ることも可能だという。
50代行員、「一度減った給料、元に戻るか不安」
この制度について、行員はどう受け止めているのか。
みずほ銀行で東京23区内の私鉄駅前にある支店長の男性(50代)は「体のいいリストラでは」と懐疑的だ。
「近年は店舗の統廃合などの業務効率化で、人が余っているなと感じます。私たちくらいの年代になると、世間的には高い給料をいただいていますので、それに見合った成果を出せていない『おじさん』たちの人件費を減らしたいのでしょうね。リストラが強化される前に手に職を付けるため、(この制度への応募を)慎重に考えてはみますが、一度減った給料が元に戻るか、不安ですね」
この支店長のような見方について、みずほFGの広報担当者は「あくまで本人の希望に基づくものであり、会社側から週休3日・4日を指示することはできませんので、リストラにはあたりません」と強調する。
支店長の同僚の中には、子育て中の行員や親の介護で休みがちな人もおり、今回の制度が明らかになってから、さっそく男性に相談があったという。
「育児や介護のための休職だけでなく、仕事と両立させる柔軟な働き方もできることで、喜ぶ行員は多いでしょうね。ただし(制度適用で)昇級・昇格が遅くなるのかは気になりますが...」
一方、みずほ銀行本店勤務の課長職の男性(40代)は「人件費を人単位ではなく時間単位で削りつつ、行員の自己実現を促すうまいやり方だ」と感心する。
この男性は、制度を研究しつつ、大学時代の同級生が立ち上げたスタートアップ企業に参画することを検討し始めたという。
「私は出世が早い方だと思いますが、役員レベルまで行けるかというと、きっと無理でしょう。であれば、メガバンク行員という安定を保ちつつ、『第2の人生』を視野にチャレンジしてみたいと思っています。通用しないな、と思えばまた週休2日制に戻すこともできるそうですから。もちろん外での経験で得られた知見は『本業』に還元するつもりです」
週休3日制、他業界でも 労働時間増えるか、給料減るか
週休3日制の動きは他業界では進んでいる。ユニクロなどを展開するファーストリテイリングは週休3日が可能だが、1日の勤務時間は2時間増える方式だ。ヤフーや日本IBMなどでは1日の所定労働時間は8時間のままで週休3日が可能だが、給料は減る形だ。
なお、今回のみずほFGの週休3~4日制の対象になるのは、みずほFG、みずほ銀行、みずほ信託銀行、みずほ証券、みずほ総合研究所、みずほ情報総研、計6社の正社員。派遣社員など非正規の行員・社員は対象外だ。