2020年10月1日から東京都発着の旅行も対象に加わり、一気に盛り上がりを見せる政府の観光需要喚起策「GoToトラベル」キャンペーンが、ここにきてトラブルに見舞われている。
運転免許合宿をキャンペーンに入れたり、換金性の高いプランをホテルの宿泊プランに加えたりするなど「目的外」の使われ方が目立つのだ。
また、10月からのキャンペーンの目玉である「地域共通クーポン券」が宿泊先のホテルに届いていないなどの混乱も生じている。これでは「GoToトラベル」に行って「GoToトラブル」にあうようなものだ、という怒りの声もあふれている。主要メディアの報道とネットの声を拾うと――。
ホテルが困惑 クーポン券が届かない!
もう一つ問題点が指摘されているのは、10月1日から始まった「地域共通クーポン券」の混乱だ。観光庁「GoToトラベル」事務局のホームページによると、地域共通クーポン券とは、次のようなものだ。
(1)10月1日以降に開始するGoToトラベル対象旅行について、旅行代金の15%を付与する。
(2)付与の上限は、1名1泊あたり6000円分、日帰りの場合は3000円だ。
(3)旅行期間中に限り、旅行先と隣接した都道府県内の対象店(飲食店・土産物店・観光施設・体験メニュー・交通機関など)で、地域共通クーポン券を使って代金の支払いができる。
(4)紙クーポンと電子クーポンの2種類があり、額面1000円単位で発行、おつりは出ない。配布方法は旅行を予約した事業者により異なる。
というものだ。
しかし、産経新聞(10月3日付)「『GoToトラベル』15%還元クーポン届かず、ホテル混乱 宿泊客にしわ寄せも」によると、こんな案配になっている。
「地域共通クーポンのホテルに対する配布が遅れ、現場で混乱が起きている。クーポンは紙と電子があり、紙は旅行大手などで構成する事務局(東京)からホテルに宅配で届けられる。何枚届くかは事前に決まっているが、大阪市内のある高級ホテルは9月30日になってもまったく届かず、担当者が事務局の大阪オフィスに出向き500枚だけあった在庫のクーポンを受け取った」
10月2日になっても予定枚数の4分の1、5分の1しか届かないというホテルが多かった。「お客さまに対し、届いていないからお渡しできないでは通らない」と困惑するホテルが相次いだ。また、紙のクーポンには利用可能な「利用エリア」(目的地と隣接する都道府県)と「有効期限」を専用スタンプでホテルなどが押さなければならない。このスタンプも東京の事務局から届かないというお粗末な珍事が起こった。産経新聞が続ける。
「(各ホテルでは)印影のデータをもとにシールを自作するなどの対応に追われている。運良く届いた近隣の系列ホテルに『その都度借りに行っている』というホテルもあり、事務局にメールで問い合わせても返答はない」
クーポン券がどこで使えるか、ホテルも知らないとは!
一方、クーポンをめぐっては、ホテル内の飲食店の一部が使える店として認可が下りない、ちぐはぐなケースもあるという。大阪市のホテルは館内にある全飲食店を申請したが、バー1店だけがいまだに「保留」。事務局に問い合わせてもなぜ保留なのか説明はない。産経新聞の取材に対し、事務局は、
「(観光庁から)受託している立場で何も話せない。こちらの現場は混乱していない」
という返答。また、発送の遅れについて観光庁は、
「一部は事務局がホテルなどへ持参したとの報告も受けているが、原因は調査中」
と答えるだけだった。
この記事に関してはネットでは、「体験者」からの怒りの声が相次いだ。
「昨日(10月4日)からホテルに泊まっていますが、もらったクーポンには使える地域を手押しのスタンプ押印、さらに宿泊日数に応じた有効期限を押印してお客さんに応じて用意したようだ。相当な手間だろう。そしてトドメは、このクーポンをホテル周辺のどこの店で使えるか、ホテルでも把握できないこと。こんなに民間業者や旅行客を混乱に陥れる政策なら、所得税の定額減税でもしたほうがよかったと思う」
「昨日(10月4日)、宿泊してクーポンをもらったが、あとから『渡し過ぎました』と言われてビックリしたことと、使えるところを調べて行っているのに、『まだ機械が来てないので使えません』とか、『やり方がわからないので使えません』とか言われて驚いた。結局、自分で周辺の6~7軒回ってやっと使えた。グダグダにも程がある!」
「それ、ひどい話ですね。金銭的な損失だけでなく、時間も奪われていますよね。旅行中のタイトなスケジュールの中で、これはキツイ。何か所か観光できなくなりますよね」
「民間ならば、もっと準備をしてから開始するはずだ。『あのホテルは嘘をついて、クーポンがもらえなかったよ。二度と来るもんか!』と噂がたてば、想像ができないくらいのダメージを負うことになる」
「安倍・菅政権のいつもどおりのグッダグダ。ホテル側、お店側のスタッフは大変だったろうな。ホント政府ってクーポン券とか商品券好きだな。シンプルにやればいいのに、無駄に複雑化して失敗する。最初から問答無用の宿泊費半額補助だけと割り切れば話は早かった。さらに言えば電子クーポン。今度行く旅館周辺では大半の店で使えないから、帰り際にドラッグストアにでも寄るしか使う方法がない!なんでこんなアホなキャンペーンにしたのか」
(福田和郎)