国がマイナンバーを持つ人に1人最大5000円分のポイントを配る「マイナポイント」事業が始まって1か月。国が設けた「先着枠」は4000万人だが、申込者はその17%の約672万人(2020年10月2日時点)と、出足はいまいち。一方、これを機会に顧客獲得増を目論むキャシュレス決済各社は独自の上乗せ還元キャンペーンを打ち出している。
マイナポイントは21年3月までに、マイナンバーカードにひも付けた電子マネーやクレジットカード、スマホ決済などのキャッシュレスで買い物やチャージをすれば、利用額の25%分が還元される。還元の上限は1人5000円分なので、2万円分の買い物をすれば上限に達する。ポイントはその後のキャッシュレスでの買い物に使える。消費者にとって、お得で便利なサービスを選びたいところだ。
今のところ最も選ばれているのはやはり...
消費税増税による景気の落ち込みを緩和するための「キャッシュレス・消費者還元事業」(2020年6月末で終了)ではポイント還元率が5%または2%だったので、今回の還元率25%はかなりの「大盤振る舞い」だ。一方で今回申し込めるのは、マイナンバーカード1枚につき一つのキャッシュレス決済サービスのみ。一度選ぶと変更できないこともあり、各社とも利用者の「囲い込み」に必死なのだ。
たとえば、イオンの電子マネー「WAON」はマイナポイント登録での25%の還元に加え、独自に10%のポイントを付与するキャンペーンを展開している。還元率は合計で35%になり、2万円の買い物やチャージの場合は計7000ポイントもらえることになる。ゆうちょ銀行の「ゆうちょペイ」も新規登録者に1500円分を上乗せで付与する。こちらの合計還元率は32.5%だ。
NTTドコモのQRコード決済「d払い」やauの「au PAY」、メルカリの「メルペイ」、JR東日本の電子マネー「Suica」などは、いずれもマイナポイント登録者に最大1000円分のポイントを上乗せして付与する。合計還元率は30%だ。ドコモは、d払いの合計還元率が37.5%になるキャンペーンを9月30日まで行っていた。各社は顧客囲い込みのため、今後も不定期に、赤字覚悟で還元率を上乗せするキャンペーンを行う可能性があり、要注視だ。
ちなみに、ICT総研が8月31日に公表したアンケートでは、回答者1774人の22.3%がソフトバンク系の「Paypay」を選んでいた。2位はWAON(12.0%)。3位は楽天の「楽天カード」(11.0%)、4位はd払い(6.7%)が続く。
PayPayの場合、マイナポイント登録者を対象に抽選で総額1億円分が当たるキャンペーンを8月末まで展開していた。インフォキュリオングループの調査では、PayPayはQRコード決済での利用率が63.8%で1位となるなど普及が進んでいることもあり、マイナポイントでもひも付ける人が多かったようだ。
マイナポイント目的のムダな買い物に要注意!
総務省によれば、先着枠の4000万人は、マイナポイント事業の予算枠2000万円を、1人に付与するポイントの5000円で割り戻した人数だ。公式サイトには「予約者数が予算上限に達した場合、マイナポイントの予約を締め切る可能性がある」と書かれている。
申し込みが始まった7月はじめの時点の申込者は約170万人で、買い物やチャージでポイントが付くようになった9月はじめでは約380万人。徐々に増えてはいるものの、直ちに先着枠が埋まるペースではない。マイナポイントの低い認知度に加え、ICチップを搭載したマイナンバーカードを取得後に電子証明書を読み込ませて「マイキーID」を発行するまでの手続きの煩雑さが、出足の鈍さの要因だ。
まだ余裕があると言える状態なので、どのキャッスレスサービスがお得で便利か、よく見極めてからでも遅くないだろう。
国は「家族4人なら5000×4=最大2万円分」とうたっているが、2万円分のポイントを受け取るには、計8万円の買い物やチャージをする必要がある。ポイント付与の期限は21年3月末までなので、それまでにマイナポイント目的でムダな買い物をするのは避けたいところだ。
たとえば普段の食料品を、イオン系のスーパーなどで買い物している人は、WAONで決済することで無理なくポイントを貯めることができるだろう。JR東日本の利用やSuicaでの決済が多い人は、Suicaをひも付けるほうがいいかもしれない。公共料金や通信費などをまとめてクレジットカード払いしている人は、楽天ポイントが付与される楽天カードも有力な選択肢になるだろう。