「年金だけでは老後を乗り越えられない」
「老後に向けて2000万円は貯めないと暮らしていけない」
そんな不安が広がった「老後資金2000万円問題」。2019年、その発端は金融庁の金融審議会市場ワーキング・グループがまとめた報告書だった。
ところが、日本生命保険のセカンドライフについてのインターネットアンケート(2020年9月16日発表)によると、老後資金は2000万円でも「足りない」時代になったらしい。
セカンドライフをスタート(60歳)するまでに貯めておきたい金額の平均は3033万円となり、2019年と比べて145万円増加。とうとう3000万円台に乗った。
月々30~40万円が必要
調査によると、「セカンドライフの予算」について、単身(回答者数2059人)の場合は、ゆとりあるセカンドライフに必要な生活費の平均(全世代:20代~70代超)は1か月あたり約24万6000円となり、現在の生活費(平均16万2000円)と比べて8万4000円の増額となった。
夫婦(同4295人)の場合は、ゆとりあるセカンドライフに必要な生活費の平均が約28万8000円となり、現在の生活費と比較して4万8000円の増額となった。
ニッセイ基礎研究所生活研究部の主任研究員、井上智紀氏は、
「ゆとりあるセカンドライフに必要な生活費は、単身では60代を除くすべての年代で『20万円未満』が最も多く、夫婦の場合では40~50代、70代で『25万~30万円未満』、60代で『30万~35万円未満』が最多となりました。単身、夫婦ともに年代を問わず、平均金額が現在の生活費よりも多くなっていることは、現在の生活に経済的なゆとりが乏しいことがわかります。その一方で、趣味や娯楽への支出を増やすなどの、セカンドライフへの期待の大きさが表われているのではないでしょうか」
とみている。
「セカンドライフをスタートするまでに、貯めておきたい金額はいくらですか」の問いに、全世代(回答者数4784人)の平均は3033万円となり、前年(2888万円)と比べて145万円も増加した。
貯めておきたい金額で、最も多かった答えは「1000万~3000万円未満」の50.5%だった。また、全世代の65.2%の人が目標金額の5割を達成できていなかった。
コロナ禍で不安だけが募り......
「老後資金2000万円問題」は、収入を年金のみに頼る無職世帯のモデルケースで、20~30年間の老後を生きるためには、約2000万円の老後資金が必要になるとの試算。夫が65歳以上、妻が60歳以上の無職世帯の平均的な実収入は月額約21万円で、消費支出は約26万4000円になる(総務省調べ)とされる。毎月約5万円の赤字で、30年間では5万円×12か月×30年=1800万円の赤字となる計算。この赤字分を、貯蓄から補填する必要があるだろう、というのが金融庁の報告書で示されていた。
日本生命の調査によると、「ご自身のセカンドライフに不安はありますか」(回答者数6586人)の問いに、全世代の66.9%の人が「不安がある」と答えた。定年に近づく年代ほど、不安を感じる人の割合が高い。
また、「新型コロナウイルス感染症をきっかけに、老後の備えとしてお金や健康面について考えたり、計画を見直したりしましたか」(6313人)の問いには、全体で7.7%の人が「はい」と答えた。現時点では高額な医療費が必要なことから、コロナ禍で不安が高まっている様子がうかがえる。
具体的に考えたこと、計画を見直したことについて聞くと、「生活費の節約」「預貯金」「定期的な運動」「食生活の見直し」といった回答が多かった。「年金保険への加入」や「つみたてNISAやiDeCoへの加入」「安定した企業での勤務」など金銭面の見直しや、コロナ対策では「家のリフォームにより個人の部屋を持つ」ことや「住む場所を見直す」「田舎への移住」「医療保険への加入」があがった。
定年後の生活について、全年代の64%の人が「仕事を続けたい」と回答。働く目的を聞くと、全世代の88.0%の人が「収入を得るため」と答えた。
ニッセイ基礎研究所の井上智紀氏は、コロナ禍で「(貯蓄などの)具体的な動きが出てくるのはこれからでしょう。『つみたてNISA』が若い人に人気ですが、コロナ禍の自粛ムードの中で考える時間があったためか、若者では動きがありました。しかし、景気悪化や給料やボーナスの減額、雇用不安が募るなか、中高年世代はそうは動けません。ただ、飲食業や旅行業などを除けば、苦しいけどなんとかやり繰りしている人たちは少なくなりません。今後は、こうした人たちが少しずつ動き出すと思われます」
と話している。
なお調査は、日本生命が8月1日~14日に、「ずっともっとサービス」のサンクスマイルメニューのひとつとして、「ご契約者さま専用サービス」で実施。7543人(男性4045人、女性3498人)が回答した。