コロナ禍で不安だけが募り......
「老後資金2000万円問題」は、収入を年金のみに頼る無職世帯のモデルケースで、20~30年間の老後を生きるためには、約2000万円の老後資金が必要になるとの試算。夫が65歳以上、妻が60歳以上の無職世帯の平均的な実収入は月額約21万円で、消費支出は約26万4000円になる(総務省調べ)とされる。毎月約5万円の赤字で、30年間では5万円×12か月×30年=1800万円の赤字となる計算。この赤字分を、貯蓄から補填する必要があるだろう、というのが金融庁の報告書で示されていた。
日本生命の調査によると、「ご自身のセカンドライフに不安はありますか」(回答者数6586人)の問いに、全世代の66.9%の人が「不安がある」と答えた。定年に近づく年代ほど、不安を感じる人の割合が高い。
また、「新型コロナウイルス感染症をきっかけに、老後の備えとしてお金や健康面について考えたり、計画を見直したりしましたか」(6313人)の問いには、全体で7.7%の人が「はい」と答えた。現時点では高額な医療費が必要なことから、コロナ禍で不安が高まっている様子がうかがえる。
具体的に考えたこと、計画を見直したことについて聞くと、「生活費の節約」「預貯金」「定期的な運動」「食生活の見直し」といった回答が多かった。「年金保険への加入」や「つみたてNISAやiDeCoへの加入」「安定した企業での勤務」など金銭面の見直しや、コロナ対策では「家のリフォームにより個人の部屋を持つ」ことや「住む場所を見直す」「田舎への移住」「医療保険への加入」があがった。
定年後の生活について、全年代の64%の人が「仕事を続けたい」と回答。働く目的を聞くと、全世代の88.0%の人が「収入を得るため」と答えた。
ニッセイ基礎研究所の井上智紀氏は、コロナ禍で「(貯蓄などの)具体的な動きが出てくるのはこれからでしょう。『つみたてNISA』が若い人に人気ですが、コロナ禍の自粛ムードの中で考える時間があったためか、若者では動きがありました。しかし、景気悪化や給料やボーナスの減額、雇用不安が募るなか、中高年世代はそうは動けません。ただ、飲食業や旅行業などを除けば、苦しいけどなんとかやり繰りしている人たちは少なくなりません。今後は、こうした人たちが少しずつ動き出すと思われます」
と話している。
なお調査は、日本生命が8月1日~14日に、「ずっともっとサービス」のサンクスマイルメニューのひとつとして、「ご契約者さま専用サービス」で実施。7543人(男性4045人、女性3498人)が回答した。