コロナ禍のなか、医療とともに介護人材の就業が問われている。新型コロナウイルスの感染拡大で、高齢者などを受け入れている介護施設では一たんウイルスの侵入を許せば深刻な事態を招きかねないことから、厳重な警戒態勢がとられてきた。
それでなくても介護の仕事は、人に寄り添い、命を預かる緊張感と重労働で、心身ともに休まるときがないほど。そんな介護人材の採用と定着のため、ウィズコロナ時代の介護業界への理解を深めてもらおうと、企業の人材戦略を支援するリクルートキャリアと、同社の介護業界の就業人口を増やすプロジェクト「HELPMAN JAPAN(ヘルプマンジャパン)」が「オンラインシンポジウム2020~コロナ禍における新たな採用×定着のかたち~」を、2020年9月24日に開いた。
リクルートキャリア事業推進室・HELPMAN JAPANグループの池津祐樹(いけつ・ゆうき)マネジャーは、
「介護業界では、オンライン化を積極的に進められている事業者とそうでない事業者とで差があることを把握していたので、正解がないなか、手探りで採用、定着の施策に試行錯誤されている人事担当者の生の声を届けることが、一歩を踏み出すためのヒントとなるのではなないかと思い、今回のイベントを開催しました」
と話している。
コロナ禍に介護施設が人材確保で実行したことは?
「HELPMAN JAPAN」は、ウェブサイトで介護法人のコロナ禍での採用や定着の取り組みについて介護施設の職員にインタビューした特集記事を「#つむぐ!笑顔メッセージ!!」として、6月からシリーズ化している。
今回のシンポジウムは、このシリーズに登場した横浜市や東京都内で高齢者向け、障がい者向け事業を展開する若竹大寿会(横浜市)と、特別養護老人ホームのほかショートステイやグループホームの一燈会(いっとうかい、神奈川県二宮町)、特別養護老人ホームや訪問介護サービスの小田原福祉会(小田原市)、障がい者向けのサービスを提供する南高愛隣会(長崎県諫早市)の4社が、「コロナ禍における新たな採用×定着」をテーマに収めた記事では語り切れなかった部分について、各地の介護法人経営者らに参考にしてほしいと講演した。
新型コロナウイルスをめぐっては、感染拡大の当初から、高齢者や持病のある人に感染した場合に重症化しやすいリスクが指摘されており、講演した4社の担当者らはいずれも、2、3月の早い段階から外部の人たちとの非接触化、業務のオンラインへの転換を急いだことを強調。その中で、オンラインで臨んだ採用では、これまで「苦戦」していた反省から戦略を練り直したことも手伝って、離職がほとんどみられなくなり、定着化が進む傾向にあったという。
たとえば、若竹大寿会では会社説明会の開催を控えて、「緊急事態宣言が出るとわかったところで早々にオンラインの準備を始めた」と説明。「業界的には早い段階での導入ではないか」という。
通学中の電車の中でスマホを使っても参加できるように、学生側のカメラ、マイクはオフにして、zoomのアンケート機能やチャット機能で双方向性を確保するなどした工夫で、説明会の参加者は前年に比べて約2.5倍に増えた。
若竹大寿会をはじめ、各介護施設では「求職者に正しく情報を届けるには最適」として、ツイッターやインスタグラムなどのSNSの活用を紹介した。