冷蔵庫の管理、していますか?
―― 外食産業ではいかがでしょうか。
崎田さん「食品関連事業者の中でも、食品ロスの割合がどうしても高くなってしまうのが、外食産業です。ホテルやレストランなどでは調達した食材を使い切ろうと、天気予報から売上予測を立てるなどして、注意を払ってきました。しかし、無視できないのは、お客さんの食べ残し。店側から言いにくい事情もあって、悩みのタネでした。そこで最近では、小盛や食べきれる量のメニュー開発など工夫が見られます。また、消費者の自己責任にもとづき、食べきれなかった食事の持ち帰りを認める動きもあります。
居酒屋も積極的です。関連する話として、年末の忘年会・宴会は食べ残しが多くなりがちなのですが、それを減らそうと自治体とも連携して呼びかけています。たとえば、福井県の『宴会五箇条』や長野県松本市の『3010運動』では、宴会の最初の30分と最後の10分は食事に集中して、食べ残しを減らそうと促しています。この取り組みは各地に広まり、おもしろい調査結果もあります。京都市が2017(平成29)年、忘年会シーズンに『3010運動』を幹事が呼びかけるグループ(4件=59人)、そうでないグループ(3件=50人)で食べ残しの量が変わるか、検証しました。その結果、幹事が呼びかけたグループは、そうでないほうと比べると、食べ残しの量は約5分の1だった、というのです。
幹事の役割は大事だといえそうです。宴会のときは事前に、店側と幹事の間で何人が来て、お酒と食事のどちらが多くなりそうか、などを打ち合わせておくと、なおいいですね。私が以前取材したときにうかがった話では、店側が熱心にコミュニケーションをとると、評判がよくなって、リピーターや売上増にもつながるようです」
自治体担当者向けの研修会で講演する崎田裕子さん(提供:全国おいしい食べきり運動ネットワーク協議会)。
―― 家庭ではどんなことに取り組むべきですか?
崎田さん「一番大事なのは、冷蔵庫の管理。家庭の場合は、買ったのに使わないまま、食品を捨ててしまうことが多いからです。そのためにまずは、買い過ぎて食品を余らせないよう、必要なものをメモして買い物に行くといいですね。 スーパーなどで買い物するときはぜひ、棚の前から順にとってほしい。小さなことかもしれませんが、スーパーの関係者と話すと必ず挙がる課題です。消費者の知恵として、消費期限や賞味期限が長いものを選びがちですが、そうすると期限が近いものばかりが残り、廃棄するリスクが高まります。そればかりか棚も雑然として、あとから来た人は、なんとなく買いづらくなってしまう。店に対するマナーとして、ご理解いただきたいところです。
ちなみに、容器や袋に書かれている消費期限と賞味期限の違いをご存じですか? 消費期限は、期限が過ぎたら食べないほうがよく、お弁当やおにぎりなど、いたみやすいものに表示されています。これに対して、比較的長持ちする食品に記載されるのが、賞味期限。別名、味わい期限です。適切に保管していれば、期限が過ぎたら風味は落ちるものの、すぐに食べられなくなるわけではないのです。日付だけを見て捨ててしまう人は少なくないと思いますが、いったん味を確かめてみて。風味が落ちていたら、食品によっては料理に混ぜて使うといいと思います」