JR終電繰り上げは朗報か迷惑か? 「残業が減って働き方改革に」「逆に会社に泊まり込む人が増える」と賛否両論(1)

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   JR東日本が来春(2021年春)のダイヤ改正で、東京駅から100キロ圏内にある在来線の終電を30分程度繰り上げることになった。具体的な内容は2020年10月中に発表する。JR西日本も同様の措置を、近畿エリアで来春から実施する。

   実現すれば、残業時間が減る働き方改革につながる一方で、飲食店が営業時間の短縮を余儀なくされるなど、大きな影響が出そうだ。

   ネット上では、

「遅くまで電車があるから遅くまで働かされる。残業が減って大歓迎だ」

と賛成する声が大半だが、

「逆に会社に泊まり込むことになる」 「遠くから都心に通っている人は困る」

といった反対意見も少なくない。ネットの声を拾うと――。

  • 終電が30分早まるJR東日本(写真は山手線)
    終電が30分早まるJR東日本(写真は山手線)
  • 終電が30分早まるJR東日本(写真は山手線)

コロナ禍で深夜時間帯の乗客が7割近く減っている

   主要メディアの報道によると、JR東日本の場合、東京100キロメートル圏の各路線で終電時刻を30分程度繰り上げ、終着駅到着時刻を概ね1時頃にする。

   たとえば、現在終電着時刻が1時20分ごろの場合は、終電着を0時50分ごろとする。終電繰り上げにあたって、混雑による「3密」回避にも配慮。金曜日など終電間際に乗客が多い日は、必要により終電前の臨時列車増発も行なう。

   終電を繰り上げる理由について、JR東日本がまず挙げるのは、深夜時間帯の乗客の激減だ。新型コロナウイルスの感染拡大で行動様式が変わり、在宅ワークが増えた。遅くまで残業したり、飲み歩いたりする人が減った。山手線の上野-御徒町駅間を例に取ると、0時台の6本は66%減と大きく減少した。

   JR東日本としては「新型コロナの感染が終息しても、テレワークやEコマース(電子商取引)などは今後さらに浸透することが想定されるため、乗客数が元に戻ることはない」として、終電繰り上げを決めたという。

保守・点検・修理作業の人手不足も理由の一つ

   もう一つ大きな理由は、人手不足だ。ホームドア設置やバリアフリーの充実といった、安全やサービス向上が目的の工事量の増加しているのにもかかわらず、これを行う保守、点検や修理の作業人員が減っている。過去10年間で工事量は約10%増えたが、作業人員は逆に約20%減っている。

   作業は終電後の列車が走っていない時間帯に行われる。真夜中から明け方までの勤務のため、なり手が少ない。少人数で作業を行うには、列車が動かない時間を長く確保する必要があるため終電を繰り上げるというわけだ。

   終電繰り上げの背景に「保守・点検・修理」の人員不足という事情があることについて、ネット上では共感の声が多い。

   鉄道ライターの伊原薫さんは、こう投稿する。

「鉄道会社の人員不足は深刻です。近年、大都市近郊の駅や路線でも『みどりの窓口』の閉鎖や無人駅化、自動運転によるワンマン化の検討が進んでいます。これもコスト削減という面よりも、ここで余裕の出た人員を駅ホームでの安全確保や障害者の移動支援に回す、という面が大きいです。少子高齢化が進む今、多少の不便を社会が負担しながら生活を送れるように考え直す時期がきたと言えるでしょう」

   実際に鉄道の保守・点検に携わっている人からは、こんな声が。

「鉄道の工事に携わる者としては、終電の30分の繰り上げはありがたい。首都圏では、終電から始発までの時間が3、4時間。移動や準備、撤収、安全確認の時間を差し引くと、実質的な作業時間は1、2時間しかとれない。一つの工事を完了するのに、数回に分けて夜間作業を行う必要があり、非常に効率が悪い。メンテナンスの重要性に対する人々の理解が深まるのはありがたいことと思う」
「JRの『花の運転、涙の保線』は国鉄時代から変わらない。お客様と接する駅務や運転、車掌と比較して、直接関われないうえ、屋外勤務で夜勤も頻繁な保線は人気がない。高給で釣っても人員確保が難しくなっているのが現状だ」
「終電の繰り上げの報道があると、深夜の街でサラリーマンにインタビューする利用者目線の意見が多かったと思います。その時間がメンテナンスに活かされて、安全運転を支えてくれている方々がいることに感謝します。安全運行ありがとうございます」

(福田和郎)

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