保守・点検・修理作業の人手不足も理由の一つ
もう一つ大きな理由は、人手不足だ。ホームドア設置やバリアフリーの充実といった、安全やサービス向上が目的の工事量の増加しているのにもかかわらず、これを行う保守、点検や修理の作業人員が減っている。過去10年間で工事量は約10%増えたが、作業人員は逆に約20%減っている。
作業は終電後の列車が走っていない時間帯に行われる。真夜中から明け方までの勤務のため、なり手が少ない。少人数で作業を行うには、列車が動かない時間を長く確保する必要があるため終電を繰り上げるというわけだ。
終電繰り上げの背景に「保守・点検・修理」の人員不足という事情があることについて、ネット上では共感の声が多い。
鉄道ライターの伊原薫さんは、こう投稿する。
「鉄道会社の人員不足は深刻です。近年、大都市近郊の駅や路線でも『みどりの窓口』の閉鎖や無人駅化、自動運転によるワンマン化の検討が進んでいます。これもコスト削減という面よりも、ここで余裕の出た人員を駅ホームでの安全確保や障害者の移動支援に回す、という面が大きいです。少子高齢化が進む今、多少の不便を社会が負担しながら生活を送れるように考え直す時期がきたと言えるでしょう」
実際に鉄道の保守・点検に携わっている人からは、こんな声が。
「鉄道の工事に携わる者としては、終電の30分の繰り上げはありがたい。首都圏では、終電から始発までの時間が3、4時間。移動や準備、撤収、安全確認の時間を差し引くと、実質的な作業時間は1、2時間しかとれない。一つの工事を完了するのに、数回に分けて夜間作業を行う必要があり、非常に効率が悪い。メンテナンスの重要性に対する人々の理解が深まるのはありがたいことと思う」
「JRの『花の運転、涙の保線』は国鉄時代から変わらない。お客様と接する駅務や運転、車掌と比較して、直接関われないうえ、屋外勤務で夜勤も頻繁な保線は人気がない。高給で釣っても人員確保が難しくなっているのが現状だ」
「終電の繰り上げの報道があると、深夜の街でサラリーマンにインタビューする利用者目線の意見が多かったと思います。その時間がメンテナンスに活かされて、安全運転を支えてくれている方々がいることに感謝します。安全運行ありがとうございます」
(福田和郎)