旧態依然の土木工事の現場 30代社長が「下克上」を成功させた「3倍速ワーク」って?

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   ビジネス書の成功物語といえば、IT系やコンサルティング、あるいは斬新なアイデアのカフェなど、時代を先取りして花開いたストーリーが定番だ。

   本書「湘南の元バイク小僧、たった7年で年商25億の社長になる『3倍速ワーク』で成し遂げた地域No.1 土木工事ベンチャーへの道」も、いわゆるバイブル書にもなる成功物語なのだが、土木工事業という舞台が異彩を放ち、「定番の業界」と違って未知の部分が多い分だけ興味深く読み進められる。

「湘南の元バイク小僧、たった7年で年商25億の社長になる『3倍速ワーク』で成し遂げた地域No.1土木工事ベンチャーへの道」(上原総栄著)小学館
  • 「3倍速ワーク」で臨めばまだまだ成長に道あるはず
    「3倍速ワーク」で臨めばまだまだ成長に道あるはず
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いまや「6K」職場の評価が定着

   著者の上原総栄(うえはら・そうえい)さんは、1983年の神奈川県生まれで2020年のことし37歳。オートバイ好きからバイクの板金工となり、さらに土木工事会社に入社。3年目で現場責任者を任されるなど実績を挙げ、13年に県内は茅ヶ崎で自ら土木工事会社を創業。7年間で、湘南地域でトップの施工実績をあげるまでに成長させた。

「創業して何十年も経っているような老舗企業が受注を独占する地元の経済界に置いて、いわば下克上を成し遂げたのです」

と、胸を張る上原さん。

   そう声を大にして言いたいのにはワケがある。土木工事の世界では、古い業界にいつまでたっても支配され、非効率や不条理が是正されぬまま放置され、創業間もないベンチャー企業がそのなかで、成長を果たすなどだれもが考えていなかった。その中での壮挙だったからだ。

   「建設業界とまったく異なる業界で働くビジネスパーソンにとっても『3倍速ワーク』の考え方とノウハウは必ず役立つことと確信しています」と、上原さん。本書では、多くの人に「3倍速ワーク」について知ってほしいと、その詳細をまとめたほか、旧態依然とした業界に挑み下克上を成功させた軌跡についてもレポートされている。

   同業者、関係業者の社長は60歳なら若いほう。70代の経営者がほとんどだ。少子化のなか、3K(きつい、汚い、危険)ばかりか、「格好悪い」「休日少ない」「給料安い」の新3Kがプラスされ、6K職場の評価が定着し、新たに業界入りする若者もめっきり減った。

   その中に飛びんで、こう確信した。古いしきたり、非効率、不条理を是正した会社をつくるだけで十分勝てる、と。

官庁からの受注がメイン

   地元の土木業者の多くは、官庁からの受注がメイン。県や市など自治体が発注者となり入札公告で業者を公募する。公共事業なので工期が比較的長く、途中で追加の請求が必要になっても支払ってもらいやすいという。

   不動産会社はハウスメーカーなどが発注者になる民間工事は、公共事業ではないビジネスなので発注者は工期や予算に非常にシビアだ。また、土木工事業者の側は、事務的に見積もり金額を出したりするだけではなく、スピードや提案力、対応力が非常に重要になるのだが、ベテランの経営者や職人は自分の腕に強い誇りを持っており、発注者に合わせて柔軟に対応する仕事の進め方を好まない。

   加えて土木業界では、官庁工事の安定した実績を持っていることが一種のブランドのように考えられているところがある。下請けの下請けや、そのまた下請けのような形で、利益があまり出ない工事ばかりをしていても「うちは役所の工事をやっているから」と満足している会社も珍しくない。

「官庁工事ばかり漫然とこなしていて、多くの会社はさして儲からず成長もしない」。

   違和感を強めた著者は、このままでは業界がジリ貧になると改革に乗り出したのだ。

民間工事の「元請け」に徹し......

   著者がとった独自の戦略は、受注は不動産会社やハウスメーカーなど民間からの「元請け」に徹するということと、民間工事を行うことに合わせ、仕事の質を落とさずにスピードを重視する「3倍速ワーク」だった。

   見積もり提出をはじめとする社内の事務作業まで、すべて他社の3倍速で処理。複数の業務の「同時並行」と「先読み」で、可能になった「3倍速ワーク」。

「工事の世界においてスピードは最大の価値。発注をする不動産会社やハウスメーカーからしてみれば、工事が早く終わればそれだけ早く完成品の建物を顧客に引き渡し利益をあげることができるからです。私たち土木工事業者にとっても、工期が短縮されればその分原価が節約できるので、当然のように儲かります」

   「3倍速ワーク」の効果で、創業1年目の売り上げが約3億3000万円となり、いきなり地域3番手にランクイン。2年目には4億円を超え、オフィスを借り、ダンプ2台、ユンボ(パワーショベル)1台を購入し、社員4人を雇用。6年目には売り上げが20億円となり、地域ナンバーワンの会社へと成長した。

   その経緯から「建設業界のまったく異なる業界で働くビジネスパーソンにとっても『3倍速ワーク』の考え方とノウハウは必ず役立つことを確信しています」と、上原さん。本書では、多くの人に知ってほしいと「3倍速ワーク」について詳細をまとめるとともに、旧態依然とした業界に挑み成功させた下克上の軌跡についてもレポート。資料も豊富に添えられ立体的構成で、読み物としても楽しめる。

「湘南の元バイク小僧、たった7年で年商25億の社長になる『3倍速ワーク』で成し遂げた地域No.1土木工事ベンチャーへの道」
上原総栄著
小学館
税別1300円

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