内閣府が2020年9月8日に発表した4~6月期のGDP(国内総生産)改定値は、年率換算で前期比マイナス28.1%となりました。
新聞やテレビでは、この「マイナス28.1%」に注目して、「戦後最悪」とか「リーマン・ショック超えの落ち込み」などと喧伝し、速報値(マイナス27.8%)からさらに悪化したと深刻に報じました。このことから、個人投資家の中には「株価が回復している今のうちに売却しておいたほうがよいのではないか」とか「大変なことになった、しばらく投資は控えておこう」などと思われた人もいるようです。
年率換算の意味をしっかり理解する
確かに、年率換算でマイナス28.1%となったことは事実ですが、この数字だけに踊らされて短期的な投資判断を行なうことは、あまりオススメできません。ここは発表された数字の意味をしっかりと理解したうえで、「長期の視点で資産運用を行なうべき」と考えます。
年率換算とは、四半期の成長率が1年間続いた場合、年間では成長率が何%になるかを示す「仮置き」の数字です。
2020年4~6月期は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で政府が緊急事態宣言(期間:4月7日~5月25日)を発令し、外出自粛や休業要請などの人為的に経済活動が抑制された時期でした。
これを年率換算の考え方に当てはめると、日本で実質的なロックダウンが実施された4月、5月の状況が1年間続くと仮定した場合の数字になります。確かに、このような状況が続いた場合、日本の経済活動が約3割減速してしまうのは当然と言えるかもしれません。
しかし、現実にはすでに緊急事態宣言が解除され、「新しい生活様式」での行動が必要となる中で、経済活動が徐々に再開されています。足元では持ち直しの動きがみられており、内閣府が8月27日に発表した8月の月例経済報告では、中国や欧米の経済情勢の改善などで、「生産」と「輸出」の判断を引き上げました。
経済活動の継続と感染拡大の抑制の両立を講じるなか、政府や日銀による大規模な財政・金融政策による経済対策が打ち出されています。今後、感染第2波拡大の状況次第では、景気が大きく落ち込む可能性はあるものの、これらの経済対策の効果や海外経済の改善による影響が出てくれば、次の7~9月期、10~12月期の景気は回復に向かい、企業業績にもプラスの影響が出ると期待されます。