2020年8月27日、ジャクソンホール会議(今年は新型コロナウイルスの感染拡大の影響でオンラインで開催)における講演で、FRB(米連邦準備制度理事会)のパウエル議長は新しい米金融当局の指針「長期目標と金融政策ストラテジー」を打ち出しました。
その趣旨は、これまで以上に雇用の最大化を重視し、2%のインフレ目標達成を目指す際に「ある程度の期間、平均して2%」となるようにし、その際に一時的に2%をある程度上回ることを容認するというものです。
米FRB、追加の金融緩和は「すぐにはない」
そして、その新しい長期目標を9月16日開催されたFOMC(米連邦公開市場委員会)において、新しいフォワードガイダンスという形で導入してきました。
それは(1)FOMCが最大雇用と評価できる水準に労働市場が達すること(2)インフレ率が2%に到達し、なおかつ、しばらくの間2%を適度に上回る軌道に乗るまで、現行の政策金利目標(0.00~0.25%)を維持する――との内容です。
最近、2%にもなかなか達しないことを考えると、かなり高いハードルです。そうなると相当の期間、FRBはゼロ金利政策となりそうですが、発表された「ドットチャート」では、2023年までゼロ金利政策が維持される見通しであることが判明しました。
こうなってくると、FRBも日本銀行もほとんど変わりません。ECB(欧州中央銀行)もマイナス金利であることを考えると、世界中の主な中央銀行がゼロ金利前後の政策をずうっと維持するということになります。
それゆえに市場関係者の多くは、株価に対しては常に強気になりますし、金(ゴールド)や銀(シルバー)といった貴金属にも強気、為替ではドル安という相場観となります。
しかし、世の中そんな単純でしょうか? このところのFRB、そしてパウエル議長を見ていると、株価や金価格のバブル的なものには一定の警戒をしているように感じます。
まず、長期的に超金融緩和が続くと高らかに宣言しているのですが、今すぐに政策を変更する意向があるかというと、それはありません。これ以上の金融緩和は、今すぐにはないのです。