コロナ禍では「撤退シナリオ」も欠かせない
2020年2月ごろから、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、スタートアップを含む、ほぼ全業種の経済環境は大きく様変わりした。本書によると、そうした「緊急状況下」での出版ということもあり、スタートアップ志望者がとるべき対応策に触れている。
コロナ以前まではビジネスとして成立していた市場も、感染拡大の影響で商売が成立しなくなっている可能性がある。飲食業やイベント業、旅行業など、消費者と直接接することがサービス提供の前提になっている場合は、いままでと同じ考え方のサービス提供はできないという。
独立・創業に踏み切る前であれば、まずは現在の生活環境で生きていけるかどうかを検討。預金残高を確認しどの程度の期間、現在の生活水準を維持できるか把握することを提案している。そして、事業計画を再考することを促す。
独立・創業したばかりという人は、「資金の確保」「コスト削減」「シナリオ検討」というのが3大ポイント。独立・創業前とその後では、利用できる政府支援策が異なる。融資、給付金、助成金についてしっかり情報を収集し、利用できるものは積極的に利用を検討するようにと著者。
シナリオについては「楽観」「中道」「悲観」の3種類を作るようアドバイス。また、このコロナ禍では「撤退シナリオ」も欠かせないという。「預金残高が○万円を下回ったら、いったん事業を手じまい」「〇月までに事業再開のめどが立たなかったら法人を休眠」など、ターニングポイントを健全な状況のうちに作っておく。
著者は「苦しい状況が続き、そこに費やした努力に引っ張られると、客観的な意思決定をすることが難しなります」と注意を促している。
「スタートアップファイナンス 起業で失敗しない『おカネ』とのつき合い方」
加瀬洋著
秀和システム
税別1800円