私は銀行で10年以上営業職として働いていた。私がやってきた営業は、主に個人のお客様への投資信託や保険商品の販売。そこから得られる手数料収入が、行員や支店の成績として計上されてきた。
つまり、当時はより手数料が高い商品を、高額で販売すれば成績が上がるという仕組みになっていた。
販売目標はこうして決まっていた!
私が働いていた銀行では半期に1回、支店に目標が本部から割り当てられる。その支店の目標を営業担当の行員の人数で割って個人目標が決められていた。目標には手数料収入以外にも、預かり資産の販売額や積立商品の販売件数などさまざまであったが、最も評価されるのは手数料収入金額だった。
そして、本部から割り当てられる目標は、支店の立地や顧客状況、規模などによって調整されていた。私が働いていたのは地方銀行。地元では賑わっていても、他府県へ行けば完全なアウェイで営業をしていかなければならなかった。なので、他府県にある支店の目標は支店規模と比較すると少なく割り当てられていた。
しかし、個人成績は完全な手数料収入金額で評価されていた。より手数料の高い商品をたくさん販売すれば成績が上がる。一人のお客様でも、手数料の高い商品を高額で購入して貰えれば手数料収入は多くなる。つまり、少額でたくさんのお客様に販売するよりも、大きな金額で購入していただけるお客様がいれば、成績は上がっていくのだ。そんな仕組みなので、地元の富裕層が多い地域で勤務しているほうが有利であることは明確だった。
成績を上げやすい支店と上げにくい支店
私が働いていた支店は他府県。地元であれば、すでに口座を保有しているお客様が多く、たくさんの預金を預けてもらっている。しかし、私の場合まずは口座を作ってもらうところからスタートしなければならなかった。地元ではないので、支店数も少なく利便性が悪い。そんな環境なのでメインバンクとして利用してもらうのは至難の技であった。
支店の置かれた環境が環境だったので、個人成績で上位になるなんて不可能だと最初からあきらめることにした。
地元の富裕層が多い支店で勤務していれば、大口のお客様も多く自然と成績が上がっていく。まだ経験が浅い営業行員もそれなりの成績を出すことができたので、少し勘違いしてしまう若手行員も少なからずいた。営業成績が上がれば周りからもちやほやしてもらえる。そうすると、さらに自分の成績をあげようと必死になるという構図ができ上がっていた。
また、多くの知識や経験がなくても、本部の研修を受ければ商品のひと通りの説明はすることができるようになる。その話法を繰り返すことで成績を伸ばしている行員もいた。手数料が大きい商品を選択して、その商品ばかり提案していくというやり方だ。
こんなやり方が目立ってきたからか、銀行では手数料が高い商品を選択して販売していると世間から言われるようになった。そして今では、個人成績の金額での評価が廃止されたりと評価方法が変わってきた。それでも最終的には銀行の利益になるのは手数料収入。営業行員の意識がどこまで変わっているのかはわからない。
良くも悪くもいろんな営業担当者がいる
これは銀行に限ったことではない。ファイナンシャルプランナー(FP)を名乗る保険の販売員も同じことが言える。保険販売の場合、直接自身の収入に関わってくるので、なかには手数料が高い保険商品を提案している人もいるようだ。
実際に、私にも無料セミナーに行ったら、いつの間にか高額な保険の契約をして帰ってきた、という友人がいる。過去のシミュレーションを用いて、良いところだけを強調。3年で資産が倍になったと言われて変額年金保険を契約していた。
変額年金保険自体が悪いというのではなく、その販売のやり方がちょっとどうかと疑問に思ったのを覚えている。また資産の大部分を保険契約に充てていたことにも驚いた。
このような仕組みなので、どうしても自身の成績や収入を軸に営業をしている人は少なからずいる。けれど、全員そうだとも言えない。銀行でも保険代理店でもきちんと提案してくれる人は必ずいる。それを見極めることができるかが一番大事だ。
きちんと営業している営業員からすれば、ひとくくりに手数料が高い商品を売りつけられると思われていることがとても悲しいことだと思う。
誠意のある担当者と巡り合うことができれば、投資でも保険でも、困ったときに相談することができる。相場のこと、商品のこと、色々聞ける人がいるということはとても心強いと思う。(ひろこ)
お金のことってなかなか人に相談できないよね。
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