コロナ禍で「働き方改革」は後退の懸念がある
結果的に見れば、企業は「建前として働き方改革を行ったように見せかけならが、実態面ではほとんど改革されていない」ということになろう。
それは、「賃金不払残業」が前年の1874事業所から36.6%増の2559事業所に増加していることや、「過重労働による健康障害防止措置が未実施の事業所」が同3510事業所から82.9%も増加して6419事業所にも増加していることにも表れている。
確かに、改正労働基準法の施行により基準が厳しくなっていることで、企業の対応が遅れているということもあろう。しかし、高橋まつりさんが「違法な時間外労働」により、心理的負荷による精神障害という「健康障害」を起こし、自殺に追い込まれたことを企業経営者が真摯に受け止め、従業員を守る行動を起こしていれば、このような結果になることはなかったはずだ。
「働き方改革関連法」では、「雇用形態にかかわらない公正な待遇の確保」も掲げており、「正規雇用者と非正規雇用者の不合理な待遇格差の禁止」もうたっているが、こちらも新型コロナウイルスの労働者支援策で、その待遇に大きな格差があることも露呈している。
詰まるところ、「働き方改革関連法」は政府が狙ったほどの成果は上げておらず、残念ながら新型コロナウイルスの感染拡大によって、改革自体が大きく後退する懸念があるということだろう。(鷲尾香一)