ケータイとスマホでわかった時代遅れ
それまで日本の産業界の成長を支えてきた「カイシャモデル」が、その呪縛の作用で国際的競争力を失ったことを示したのは携帯電話やスマートフォンなどの通信機器をめぐってだ。
2000年代前半までは、日本の携帯電話サービスは、サービス面でも、端末機器のビジネスでも世界のトップ集団を走っていた。だが、2007年にアップルがiPhoneを発売。グーグルがアンロイドOSをリリースした時期から一気に劣勢になる。
この出来事は、ガラケーというプロダクトがスマートフォンというプロダクトに負けたと考えられがちだが、そうではないという。
スマホということでは、携帯ビジネス拡大の草創期の1996年、日本のバイオニアが世界初の製品を世に送り出していた。また、携帯端末のインターネット利用ということでは、1999年にNTTドコモがiモードで世界に先駆けてプラットフォームサービスを開始している。2000年には写真をメールでやり取りできる「写メール」も登場していた。
NTTを中心に、旧電電ファミリーのメーカーやパナソニック、ソニー、パイオニア、シャープといった技術力が高いエレクトロニクスメーカー群があって築いた世界的優位だったが、iPhoneとアンドロイドによる破壊的イノベーションにより、産業アーキテクチャを根こそぎ変えられてしまい、日本メーカーが戦ってきた競争の土俵そのものがなくなってしまったのだ。
日本では、研究開発コンソーシアムを国が支援して組成すると、関係企業が「護送船団方式」のようにそろって参入。同じ事業をやるのだが「かと言って日本的カイシャはそれぞれに独立的、排他的共同体生態系なので、一つの事業体ではやらない。それぞれ別個にほぼ同じことをやって、過当競争、低収益、国際競争力喪失という負けパターンを繰り返す」と指摘されている。