60~70歳代と80歳代はトラブルの内容が違う
国民生活センターが60歳以上の高齢者から寄せられた相談について分析したところ、3つの傾向がわかったほか、60~70歳代と80歳代でトラブルの内容に違いがあることもわかった。
(1)架空請求の相談は減少したが、健康食品などの定期購入に関する相談が増加
架空請求への相談【事例1】は2018 年度から19年度は大幅に減少したが、80歳以上の年代に限ってみると、年々相談件数が増加している。
【事例1】「大手通販サイトと弁護士をかたる相手からの架空請求で次々にお金を払ってしまった」(2020年3月受付、60歳代男性)
一方、定期購入が条件であると認識しないままインターネット販売サイトなどで健康食品や化粧品などを購入してしまったといった定期購入【事例2】に関する相談が19年度に急増した。
【事例2】「お試しのつもりで購入したら定期購入だったが、表示が小さくて読めない」(2020年3月受付、70歳代男性)
(2)情報通信関連の相談が非常に多い
60歳代、70歳代では、特にインターネットを利用した「デジタルコンテンツ」や「インターネット接続回線」などの情報通信に関連する相談【事例1、3、5】が多いほか、「ネット通販」【事例2】への相談も多い。
【事例3】「強引に光回線契約を勧められたが、インターネット環境がなく不要なので断りたい」(2020年3月受付、70歳代女性)
【事例5】「出会い系サイトに誘導され、求められるままお金を払ってしまった」(2020年1月受付、60歳代女性)
また、インターネットや携帯電話などの情報通信機器の利用が幅広い世代で増えていることに伴い、80歳以上でもこれらに関する相談が増えている。高齢者にとって複雑でわかりにくい契約内容や、強引な勧誘方法などについてトラブルが起こっている。
60歳代、70歳代にみられる主な相談事例には、
【事例6】「定年退職したことを理由に、賃貸アパートの契約者を変更するよう言われた」(2019年8月受付、60歳代女性)
といった内容の相談もあった。
(3)高齢になるにつれ、訪問販売や電話勧誘販売の相談の割合が高くなる
70歳代、80歳以上と高齢になるにつれ、訪問販売や電話勧誘販売によるトラブル【事例3、4、7】が増えており、強引な勧誘などが目立つ。また、80歳以上になると判断能力が不十分と思われる人の契約時のトラブルも増えている。
たとえば、リフォーム工事やふとんなどの訪問塩梅や通信販売によって契約させられ、生活に困っているといったトラブルが少なくない。
【事例4】「自宅を訪問した業者に勧められ、よくわからないまま電力会社を変更してしまった」(2019年6月受付、80歳代女性)
【事例7】「認知症の両親が、すでに実施していて不要なはずの屋根修理工事を契約していた」(2019年11月受付、80歳代男性)
【事例8】「母が、5年後から購読が始まるという内容の新聞の定期購読契約をしていた」(2019年12月受付、80歳代女性)
高齢者になるにつれて家族などからの相談が増えており、本人以外からの相談では契約の詳細がわからないことが多く、そうした場合にはトラブルの解決が困難となることもあると指摘する。
国民生活センターは、「消費者トラブルを防ぐには、周囲の方による見守りが大切です。不安に思った場合やトラブルになった場合は消費生活センターなどに相談してください」としている。