2020年春から、分散型金融(DeFi)のブームが起こっています。
分散型金融というのは、ブロックチェーン上での金融システムを指しています。管理者がいない金融サービスをユーザーが気軽に利用することができるのです。
人や会社にに依存せずにサービスを利用できる
分散型金融の大きなメリットは、人や会社に依存せずにサービスを利用できる点です。
たとえば、従来の金融システムは銀行のような仲介業者を介して金銭のやり取りが行われています。
一方で分散型金融を利用すると仲介業者がいないため、ユーザーは自身で資産を管理できるようになります。業者がいないので、手数料などのコスト削減ができ、より手軽に金融サービスの利用が可能になるのです。
◆ 分散型取引所が大手取引所の売買代金を超える
分散型金融版の仮想通貨の取引所は、分散型取引所と呼ばれており、2017年ごろから登場してきました。しかし人が管理していないため、もし送金を間違えるなど、何か問題が起きたらどうしようと考える人も多く、取引高は伸び悩んでいました。
そこに分散型金融ブームが到来し、「Uniswap(ユニスワップ)」と呼ばれる分散型取引所の売買代金が急増。アメリカの大手取引所であるコインベースの売買代金を上回る日も出てきました。
コインベースの売買代金は、およそ350億円程度。これに対して、ユニスワップは460億円を超えてきたのです。
ついに、分散型取引所の時代が到来した! そう多くの人が思っていたところに、「Sushi Swap(寿司スワップ)」という取引所が誕生しました。内容は、ほぼユニスワップと同じですが、少しだけユーザーにとってメリットがありました。
参考リンク:寿司スワップのトークンを保有していると、ユニスワップよりも取引所の手数料の一部が還元される量が多い。
「『Uniswapの出来高、米コインベース超えに驚きの声』DeFi需要と価格高騰が後押し」(2020年8月31日付 COINPOST)
そうなると、寿司スワップが人気となります。投資家は、こぞって寿司スワップの仮想通貨であるSUSHI(寿司)を買いました。その結果、数日間で1000億円を超えるほどの資金が集まり、価格は6倍以上に急騰しました。ピーク時の時価総額は、なんと250億円ほどになったのです。
世界的な大手仮想通貨取引所であるバイナンスが、仮想通貨「寿司」を取引できるようにしたこともブームを後押ししました。
◆寿司(SUSHI)の価格推移
再び到来! 草コインブーム
驚くのは、その後です。2020年9月1日には、今度は「キムチswap」が登場。これも、コピーの取引所ようなものです。今度は、寿司を売ってキムチを買う投資家の行動により、価格は急騰しました。
すると、8月19日に取引が行われるようになった「スパゲッティ(PASTA)」という、これまた怪しげな仮想通貨が7倍以上に高騰。いわゆる、2017年末から2018年初頭に巻き起こった草コインブームが再び到来しました。
しかし、こうなるとチキンレースです。投資家の多くは、この何をするかも良くわからない仮想通貨を保有し続けることは危ないと気づき始めるでしょう。その結果、寿司スワップが下落し始めると、他の○○スワップとよばれる仮想通貨も下落。分散型金融のネットワークであるイーサリアムも、その煽りを受けて急落しました。
こうして、わずか1か月にも満たない間に草コインブームが始まり、そして去っていきました。みんな、この寿司を握っていても美味しくないなと思ったのでしょう。
しかしながら、寿司スワップがこのまま消えていくかどうかはわかりません。たとえば、日本の仮想通貨であるモナコインは、2ちゃんねる(現在は5ちゃんねる)の掲示板の中で誕生しました。
その後は、モナコインコミュニティが広がり、投げ銭機能やモナコイン決済でしか買うことのできないオリジナルグッズの誕生など、さまざまなサービスが生まれました。
さて、寿司スワップですが、ある中堅のデリバティブ取引所の最高経営責任者(CEO)に権利が移りました。開発資金は、約28億6000万円もあるようで、もしかしたら今後使えるようなサービスになる可能性もあります。
ちなみに、なぜ寿司スワップなのでしょうか? 恐らく、Uniswapがウニ(雲丹)と読めるからだと筆者は考えています。(ひろぴー)