時間も場所も超えた空間
海外から来た本に載っている「日本にはない植物」の図が、江戸時代に作られた日本初の植物図鑑に描き写されていることなどもあるそうだ。
「おもしろいですよね」
と、二つの図を指し示しながら鳥海さんは話す。
「古本の持ち味の一つに、時も場所も超えられるということがあると思います。本棚にも偏りを出さず並べるようにしていて、お客さんの好奇心をくすぐり『思わぬ発見』に繋がってほしいと思っています」
お客さんの期待に応えるために、鳥海書房のブックカバーには釣り人としても名高い画家・永田一脩氏の魚拓が印刷されている。鳥海書房では、釣り関連の書籍が日本でも有数の品揃えを誇る。釣りに関する本を目当てに来店する釣りマニアも多い。
動植物ものは子ども向けの本も豊富で、親子連れのお客さんも多いそうだ。足繁くお店に通っていた子が大きくなって博物館に勤めるようになったという話を聞かせてくれた。
学ぶ喜びを大切にする、鳥海さんの温かいサポートを想像させるエピソードである。フロア奥の書庫には数えきれないほどの本が置かれ、読み手を待ってウズウズしているよう。