飲食業界の倒産が過去最多に! 飲食店主たちの悲痛な叫び「どうか残って欲しい、おなじみの店」「思い出の味の店を使ってください」

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   新型コロナウイルスの感染拡大の打撃を受けて、飲食店の倒産件数が過去最多に達しそうな勢いで増えている。東京商工リサーチが2020年9月14日に発表した調査でわかった。

   「食堂・レストラン」「専門料理店」「そば・うどん店」「すし店」「酒場・ビヤホール」「バー・キャバレー・ナイトクラブ」「喫茶店」から「持ち帰り飲食サービス」まで含む飲食業の2020年の倒産は、1~8月累計で583件(前年同期比13.2%増)に達した。

   これは、通年(1~12月)で最多だった2011年の800件を大幅に抜くペースで、年間最多を更新する可能性が高い。

  • 心置きなく飲める時期がくるのだろうか(写真はイメージ)
    心置きなく飲める時期がくるのだろうか(写真はイメージ)
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人手不足倒産が相次いだところにコロナが直撃

   もともと飲食業は、2019年後半から2020年2月まで人手不足に伴う人件費の上昇で倒産が増加していた。そこに今年2月以降、コロナ禍による訪日外国人観光客の激減、さらに外出自粛に加え、休業や営業時間短縮の要請もあって経営環境が一気に悪化した。

   倒産件数は、3月が75件(前年同月は59件)、4月も80件(同62件)と急増。6月以降は深刻さを増し、月間100件に迫る高水準で推移している。

   負債総額は368億円(前年同期比5.4%増)で、2年連続で前年同期を上回った。負債1億円未満が524件(構成比89.8%)、資本金1000万円未満が521件(同89.3%)と小・零細企業が約9割を占め、資金力の乏しい事業者がコロナ禍で苦境に直面していることを示している。

   国や自治体の各種支援策が奏功し、企業の資金繰りは一時的に緩和している。また、9月中には「Go To Eatキャンペーン」が始まる。東京都も23区内の酒を提供する飲食店の営業時間の短縮要請を9月15日で終了した。「ウィズ コロナ」に向け経済活動は動き出しているが、飲食業界がコロナ前の売り上げに戻るには相当の時間が掛かりそうだ。

   業種別では、最も多いのが日本料理店、中華料理店、ラーメン店、焼き肉店などの「専門料理店」で152件(前年同期比14.2%増)。次いで「食堂・レストラン」138件(同5.4%減)、「酒場・ビヤホール」114件(同37.3%増)と続く。=図表1参照

(図表1)飲食業の業種別倒産件数(東京商工リサーチ作成)
(図表1)飲食業の業種別倒産件数(東京商工リサーチ作成)

   また、地区別件数では、増加率の最高は中部地方の54.0%増(61→94件)。なかでも静岡県が18件(前年同期2件)と大幅に増加するなど、三重県を除く4県で倒産件数が増加した。次いで近畿地方の23.2%増(155→191件)で、2府4県すべてで件数が前年同期を上回った。そのほか、北海道23.0%増(13→16件)、中国地方18.5%増(27→32件)、関東地方3.6%増(163→169件)と続く。一方、減少したのは4地区だけだった。東北地方の25.0%減(16→12件)を最高に、北陸地方が22.2%減(18→14件)、九州地方が11.7%減(51→45件)、四国地方が9.0%減(11→10件)の順だった=図表2参照

(図表2)全国の地区別倒産件数(東京商工リサーチ作成)
(図表2)全国の地区別倒産件数(東京商工リサーチ作成)

「一休さん」を呼ばないとどうにもならない感染対策

   ネット上では、この調査結果に対して「実際の倒産はこんな数字では済まない。あくまで氷山の一角だ」として、飲食業関係者から実態を訴える切実な声があふれている。

「業種別では『専門料理店』の倒産が一番多かった。ラーメン店もここに当てはまる。ラーメン店の場合は、味のバリエーションはあっても基本的には麺メニューのみで勝負しているお店が多い。ラーメンは麺が伸びるためテイクアウトやウーバーイーツに圧倒的に向いていない。ご飯ものや弁当を始めたり、冷凍で配送できるようにしたりと工夫している店もあったが、体力のない個人店には辛い状況だった」
「レストランを個人経営しておりますが、小規模店舗なので経費は多くはありませんのでなんとか凌げています、当面は......。先行きは厳しいのは覚悟。でも仕入れ先の業者さんはもっと厳しい状況です。社員が多く、人件費、事務所・倉庫など施設維持費。3月から6月まで納品がほとんどなかったそうです。業種的に休むこともできず、雇用助成金も使えず給料だけを支払っていると。うちは200万円借り入れで済みましたが......。これから飲食店だけで済まず、連鎖倒産が増えます。その一方で法人化した名ばかりの事業所で、ふだんの営業利益の数倍の現金を今回のコロナ給付金で手にしたお店も数多くあります」
「コロナでお客さんがピタッと止まった日から半年以上が経ちました。売り上げ激減ですが、政府の決めた前年比50%減には当てはまらず、どうしようもありません。家賃補償の話もありましたが、実際、私の場合は店舗兼住宅で住宅ローンはあります。その線引きがまったくわかりません。税金や保険料、光熱費などお金は出るばかりです。しかし倒産は避けたいところです。」
「田舎で宿泊兼飲食業をしています。田舎という立地と宿泊という仕事があるだけで何とか生活できるレベルで収まっていますが、飲食業だけでは絶対無理です。ふだんであればもっとも利益率の高い観光宴会・法事宴会などの大型の予約がまったく取れません。コロナ禍の中で積極的に営業をかけるのも難しいです。営業はしなさい、でも大人数を集めてはいけません。熱中症防止のためエアコンを付けなさい、ただし30分に1回は完全換気をしなさい。人件費も消耗品代もできるだけ使わずに、消毒を徹底しなさい......。もう、要求自体が『一休さん』を呼ばないとどうにもならないレベル。倒産は仕方ないですし、廃業するのもむしろ賢明な判断だと思います」

金策と心労のため髪が真っ白になった高級料理店主

焼き鳥を肴にグイグイ飲みたいが(写真はイメージ)
焼き鳥を肴にグイグイ飲みたいが(写真はイメージ)
「都内で有名な高級料理店の経営者が知り合いにいますが、まるで坂道を転がり落ちるような売上減が続き、6~8月の売り上げは前年同期比8%にしかならないそうです。従業員の雇用を確保するため金策に走り回っていますが、心労のためか髪の毛が真っ白になっていました」
「飲食店勤務者です。もともと飲食店は独立希望が多く、他業種と比べ比較的独立が簡単です。その分廃業も多い業種ですが、今年のコロナは個人飲食店にとっては大打撃で、知人でも3人廃業しました。以前は店を潰した後に出戻りも受け入れていましたが、今回に限っては再雇用をすべて断っている状況です。まあ、独立するってことは半分博打のようなものだと思ってしまいます」

   飲食店の苦境を思い、こんな心情を吐露する人がいる。

「飲食業は3Kとよく言われます。皆さんお昼代っていくらまでなら出せますか?大きなチェーン店の価格って安いですよね。それがあなたの基準になっていませんか?その基準ができると小さい店は価格競争で負けます。キャッシュレス化を推し進めていますが、その手数料でさえ持っていかれたくないくらいギリギリの商品価格を提示しているお店が多いのです。
日本の飲食店のほとんどが店主の労力の犠牲の上に成り立っています。都合よく安いお店を使って、潰れたら『美味しかったのになー』『残念だなー』とか言う!お客の側もお店に営業を続けてもらいたいのなら、何らかの支援をしないといけないと思います」

   この声には、「よく言ってくれた」という飲食店主の声が多かった。

「気持ちを代弁していただいた気持ちです。涙が出そうになりました。今は何とか貯金を切り崩しながら頑張っていますが、そろそろ決断しなければいけない時期になってきました。ウチにも大切に思ってくださる方がいらっしゃるので、簡単に『やーめた』とはしたくないのですが、生きていくには苦しい決断です」
「よく言って下さいました。私の所も厳しく、先を思案する時期になっています。応援して頂けるお客様もいらっしゃる中で、暴言を吐かれる方、感染予防のお願いを守って頂けない方も増えてきているように感じ、心が折れそうです」

   最後にこんな声を紹介したい。

「飲食店経営者です。飲食店全般の状況だから、つらいですね。細々と続けてきた老舗などは、そのお店の味が失われてしまうのが本当に悲しい。高齢で廃業を決めたところは、他店で味の継承をすることも難しいでしょう。そこでお願いです。どうか残って欲しい、残したいお店を使って下さい。おなじみの店、お気に入りのお店、思い出のお店。お店を守れるのは国や政府ではなく、お客様です。外食の回数が減るのは致し方ありません。少ない回数だからこそ意識して、残って欲しいお店を使って下さい。なくなってほしくないあの味を、思い出の詰まったあのお店を、どうか皆さんのお力で守ってあげて下さい。どうかお願いします」

(福田和郎)

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