「相性で外交はできない」と安倍氏に対する強烈な自負心
中央日報が続ける。
「また、徴用工訴訟に対する報復として日本が昨年輸出規制を行ったのは、安倍氏と首相秘書官である今井尚哉氏が主導したと言われているが、菅氏も強硬論の立場に立った。菅氏は2015年の慰安婦合意(編集部注:元慰安婦支援のため韓国政府が財団を設立、日本政府の予算で10億円程度の資金を一括拠出する。合意に基づく解決策が『最終的かつ不可逆的』であることも確認)の立役者だったからだ。朴槿恵政権から文在寅(ムン・ジェイン)政権に代わって、慰安婦合意が覆されるのを見て大きな挫折感を味わった。韓国を関係悪化の原因提供者に転嫁する安倍氏の認識と少しも変わらない。菅政権が発足しても韓日関係の改善は決して楽観できないのはこういう理由からだ」
と、結んでいる。
同じ中央日報(9月13日付)のコラム「グローバルアイ:侮れない首相菅義偉」の中で、ユン・ソルヨン東京特派員は、菅氏は「外交経験」のなさが最大の弱点とされているが、意外に捨てたものではないと評価している。
9月8日の会見で菅官房長官は、
「外交は(首脳間の)ケミストリー(相性)だけで左右されるような簡単なものではない」
と発言したが、これは各国首脳と個人的な人間関係を築いてきた安倍首相に対する強烈な自負心の表れだという。ユン・ソルヨン記者は、こう指摘する。
「菅氏は会見で、日米首脳電話会談を37回のうち36回同席した。韓国、中国、ロシア問題もすべて報告を受けてきたと、外交能力に問題はない点を強調した。それでも『頼りない』と言いたげな記者の質問に菅氏は神経をとがらせた。『ケミストリー』とは安倍首相を意識した単語だ。安倍首相がトランプ大統領とゴルフをして、ハンバーガーを食べ、厚い関係を誇示した姿を菅首相には想像しにくい。官房長官という職責上、菅氏は7年9か月間外遊をしたことがない」
しかし、菅氏には先を読む外交能力があると、ユン・ソルヨン記者はいう。
「2016年の米大統領選挙でだれもがヒラリー・クリントン氏の当選を楽観していた時、菅氏はトランプ系関係者と会ってつながりを作っていた。2015年の慰安婦合意締結の際にも『米国を証人に立てるべき』として米国の歓迎声明を引き出したのも菅氏の作品だった。菅氏は主要国大使と定期的に会い昼食をするなど外交使節とも幅広い接点を維持してきた」
(福田和郎)