韓国紙が大絶賛する安倍官邸の「オープンな民主主義」
安倍首相のように「オープンにすべき」と報じられた文在寅大統領
よほど、慰安婦合意を反故にされた怒りが根強いのだろう。ところで、あれほど安倍政権を批判し続けた韓国メディアだが、日本メディアが思いもよらない視点から安倍政権を称賛する記事がある。日本の首相官邸が世界でもまれなほど「オープンで民主的」だというのだ。
朝鮮日報（9月13日付）の「コラム：『金魚鉢の中』の日本首相官邸VS『宮中』の韓国青瓦台（大統領府）」で、イ・ハウォン東京特派員がこう伝える。
「『幕が上がった途端に劇が終わってしまった』。安倍首相の辞任発表直後、菅官房長官が後任に事実上決定したことに対する日本のマスコミの評価だ。日本の派閥主義・密室政治は相変わらずだ。だからと言って、日本の政治から学ぶことがないわけではない。この機会に青瓦台の役割をする首相官邸に注目して見る必要がある」
イ・ハウォン記者は、日本の首相官邸が「金魚鉢」のようにガラス張りで、「金魚」（＝首相）の動きがオープンに見えることをうらやむのだ。こう続ける。
「首相官邸は青瓦台とは異なり、記者たちが首相に接近して観察するシステムが定着している。首相と記者たちは米ホワイトハウスのような建物を使用しているが、それよりもっと開放的だ。首相は5階で、記者たちは1階で仕事をしている。記者たちは3階のロビーに自由に上がることができる。ここで、官邸を出入りする首相に質問し、訪問者に注視する。日本の新聞が毎日、誰が首相と会ったかを把握し、報道できるのもこのためだ」
安倍首相の健康問題に最初に気づいたのは、首相を毎日見守る「ぶら下がり」記者だ。ある放送局は「安倍首相のロビーを歩く速さが4月の平均18.24秒から8月には20.83秒と2秒半以上遅くなった」と報じた。別のメディアは、安倍首相がエレベーターに乗るために方向を変える時、壁に左手を置いて支えるのを「体調異常の兆候」と分析した。このようにいつも「監視」されていた安倍首相は、とうとう持病の再発を公表して辞任するしかなかった。
ところが、韓国ではどうか。イ・ハウォン記者は、こう怒りをぶつける。
「文大統領は就任当時、大統領執務室をオープンにすると約束したが、その後、反故にした。東京で勤務していた元外交官の両国比較が核心を突いている。『日本の官邸担当記者が毎日首相に会えないとしたら、サボっているか、首相が外遊中かだ。韓国の青瓦台担当記者は特に何かなければ大統領に会うことはない』。安倍首相は今年、辞任発表を含めて合計13回、公式記者会見を行った。20日間に1回の割合だ。文大統領は今年1月以降、一度も公式会見をしていない」
「安倍首相が今年5月までに国会で答弁した時間は160時間に達する。野党議員が（6月以降）安倍首相に国会に出てこいと抗議した時、菅官房長官が『日本の首相は国会に出る時間が全世界で圧倒的に長い』と不満を訴えたのは決して大げさなことではない。安倍首相が野党議員と1対1で討論する姿はうんざりするほどテレビに出ていた。野党議員が安倍首相を『鯛は頭から腐る』と侮辱した様子もそのまま生中継された」
しかし、大統領制の韓国ではそもそも大統領が国会に出席する例はまれだ。イ・ハウォン記者はこう結んでいる。
「朴槿恵（パク・クネ）前大統領をはじめとする韓国大統領の悲劇は、すべて青瓦台の閉鎖性と不透明性に端を発する。『ろうそく大統領』（編集部注・ろうそくを灯す民主化運動によって誕生した文大統領）は違うと断言したが、非公開・秘密主義の黒い幕は以前よりも厚くなった。韓国の全国民が嫌う安倍首相よりも、青瓦台の運営がうまくいかないのはなぜか。任期も末期に差し掛かるにつれて、『男・朴槿恵』と呼ばれるようになった彼が、前任者の末路をたどらないよう祈るばかりだ」
（福田和郎）