2021年に延期された東京オリンピック・パラリンピックについて、国際オリンピック委員会(IOC)幹部の発言が揺れています。ジョン・コーツ副会長が、「新型コロナウイルスの有無に関係なく開催される」と発言したかと思えば、トーマス・バッハ会長は「安全性の確保が最優先」と慎重な姿勢。予定どおり開催するのかしないのか「いったいどっちなんだ!」と、世界中からダメ出しの声が聞こえてきそうです。
さて、このIOC幹部の揺れる発言は、新生「菅政権」への「揺さぶり作戦」でしょうか?それとも......。
「コロナに関係なく開催」と言われても......
新型コロナウイルスの感染が収まらないなか、2021年に延期された東京五輪をめぐる「超強気発言」で波紋を広げたのは、IOCのコーツ副会長です。仏メディアのインタビューに「コロナがあろうがなかろうが予定どおり開催する」と発言してニュースになりました。
Tokyo Olympics will take place next year 'with or without Covid-19,' says IOC VP
(「新型コロナがあろうがなかろうが、東京五輪は来年開催される」とIOCの副会長が発言した)
take place:行われる、開催される
with or without:あろうがなかろうが、有無にかかわらず
「with or without」は「withでもwithじゃなくても」、つまり「あってもなくても」という意味です。ちなみに、アイルランドのロックバンドU2の大ヒット曲に「With or Without You」という曲がありましたが、「あなたがいてもいなくても」という意味だったのですね。
コーツ氏はインタビューの中で、東京五輪は「Games that conquered Covid」(コロナを征服した大会)として開催するとまで明言。さらに「the light at the end of the tunnel」(トンネルの先の光になる)と、超楽観的な見解まで示しています。
とはいえ、2021年7月23日の開催予定日まで10か月ちょっと。果たして「コロナを征服」なんて、可能なのでしょうか?
そう思っていたら、コーツ氏の発言に疑問を投げかけるように、新型コロナウイルスによる死者が全世界で90万人を突破したというニュースが飛び込んできました。新たな感染の中心地はインドに広がっていて、第2波の兆候が現れている欧州の状況も報じられています。
日本でも、日本経済新聞がコーツ氏の発言を「根拠がない」と報じていましたが、IOC内部からも「強気発言」を打ち消すような動きが見られました。
We remain focused on delivering safe and successful Games
(我々は引き続き安全で成功する大会の運営に尽力する)
IOCのバッハ会長は、「安全な大会の運営が最優先」だという姿勢を明確にしつつ、開催するかしないかを述べるのは「時期尚早」だという見解を改めて示しました。「何があっても予定どおり開催する」としたコーツ氏の発言は「時期尚早」だったということでしょうか。
誰も経験したことのない、オリンピックを開催するか中止にするかの判断。IOC組織内の判断もグラついているのかもしれません。