仕掛けじゃない
著者が実際に一石二鳥の問題解決ができたと思ったのは「シューズ&バッグ」の事業責任者だった2008年ごろだった。
通販の靴販売での最大の問題はサイズ。著者は、レディースシューズの基本サイズ23.0センチで幅もアーチの部分も平均的な足の持ち主の女性を選抜。この女性に毎日入荷してくる23.0センチの女性靴を履いてもらい、「幅がきつい」「サイズが大きい」「かかとが細い」など、アイテム別に特徴を入力してもらうようにした。
これらのコメントを蓄積してデータ化して商品ページに記載し、サイト利用者の靴選びの際の参考として活用され売り上げを伸ばすことができたという。
著者はまた、足のモデルの女性を「シンデレラ」と命名。このネーミングの妙がメディアの関心を呼び、記事やニュースでさまざまに取り上げられた。問題解決としてのアイデアが、アマゾンのイノベーションとして知られるようになり、その結果、販売事業も快走。「シンデレラは『アマゾンが顧客満足度を上げるためにここまでやっている企業だ』というイメージを多くの方に伝えるきっかけになった」と、著者は胸を張る。
だが、著者には当時、このことがイノベーションだという感覚がなかった。この「シンデレラ」をアイデアではあると考えていたが、イノベーションとは、エンジニアが何か仕掛けをつくって実現するものと考えていたからだ。著者は、自身のほかにも同じように考え頭を抱えている人がいるのではないかと考え、決してそうではないことを知ってもらうためにも本書を上梓した。