FTA合意はもつれにもつれて......
さて、本当にハードブレグジットとなった場合、英ポンド/ドルはどうなるのか――。おそらく、対ドルで1.20ポンドを割り込んで行くことになるでしょう。それほど、英国の被る被害は甚大です。
その一方、FTAが締結され、望ましい順調なブレグジットが実現した場合はどうなるのか。この時、ポンドは買われます。1ドル=1.35ポンドのレジスタンスを突破し、1.40ポンドを優に超える上昇となるでしょう。
このハードブレグジットか、ソフトブレグジットかで、ポンド/ドルの行方はまったく違ってきます。よって年末に向けて、このブレグジット交渉は非常に重要になってきます。
ジョンソン首相はハードブレグジットを志向しているように見えますが、それはやはり「歌舞伎プレー」であり、EU側の譲歩を引き出すためだけにやっているはず。そう信じたいのですが、真意はわかりません。
10月末が合意期限と、今は見られています。その時までに合意しないと、12月末までにEU27か国の批准が得られないからです。
しかし、10月末はもうすぐそこです。とても無理そうに見えます。おそらく交渉は10月末を過ぎても行われ続けるでしょう。もつれにもつれ12月ぐらいにやっとFTAが合意される、そんなふうになるのではないかと思われます。
では、なぜ延びるのか――。
それは欧州復興基金が合意されたとき、当初7月17~18日の2日間でEU首脳会議が開催されましたが、もつれにもつれ、3日間延長されて21日に合意に至りました。しかし、もしかしたら当初から3日間延長する予定だったのかもしれません。合意に至るためには妥協が必要であり、各国の国内政治に影響を与えます。トコトンまで戦ったがダメだった......。こうした、戦った証拠が政治的には必要になってきます。
妥協するにしても、ジョンソン首相は政権を支持する保守派の国民が納得する形で妥協しなければなりません。そのためには、期限を越えて粘り強く交渉したという「証拠」が必要になってくるでしょう。
もつれはしますが、最終的にはFTA合意に至る可能性が8割ではないか、と思います。そのときには、ポンドは上昇します。また、そうならなかった時、その時はその時であり、ポンドは1ドル=1.20ポンド割れに向けて下降するものと思われます。
どちらにしても、大きな相場が2020年の最後に待っています。(志摩力男)