新型コロナウイルスの感染拡大で、さまざまな業種の多くの企業が打撃を受けたが、なかでも深刻だったのはホテル・旅館業だ。
日本政策金融公庫の業種別の調査(有効回答は、ホテル・旅館業の187社を含む3183社)で、全体を通じて約半数の企業が「売り上げ50%以上減」とするなか、ホテル・旅館業ではその割合が9割に達したことが明らかになっている。秋の行楽シーズンも、コロナ禍で迎えることになりそうなことから、宿泊・観光業の対策が高度化する傾向にあるようだ。
京都大准教授が監修、対策徹底のブッフェ
国内各地でリゾートホテルやシティホテルを運営するコアグローバルマネジメント株式会社(東京都中央区)は、兵庫県西宮市や群馬県嬬恋村、三重県志摩市で運営するホテルで「アフターコロナ(新しい生活様式)に寄り添ったブッフェ」を採用したことを、2020年9月4日から9日にかけて相次いで発表。いずれも京都大学ウイルス・再生医科学研究所の宮沢孝幸准教授による監修のもと、「安全・安心」を徹底したことを強調している。
9日にあった「クインテッサホテル伊勢志摩」の発表によると、新しい取り組みは、「CORE's New Style Buffet」と名づけ、コロナ禍での「ニュースタイルブッフェ」を目指した。
お客は入店時や料理を選んで取る際にはマスク着用が求められるほか、ブッフェ卓には飛沫防止ガードが設置されている。スープやご飯は状況によりスタッフが取り分ける。マスク着用のスタッフは、案内とテーブル配置の専任別。料理用トングは一定時間で交換する。座席間隔や換気への配慮は怠りなく、徹底した消毒を宣言している。
「CORE's New Style Buffet」を実施している兵庫県西宮市のホテルは、「ホテルヒューイット甲子園」。群馬県嬬恋村は「軽井沢倶楽部ホテル軽井沢1130」。
ホテル・旅館業99.5%「コロナ禍続く......」
日本政策金融公庫が2020年6月中旬に実施したホテル・旅館業への新型コロナウイルスの感染拡大の影響に関する調査によると、47.8%の企業が「売り上げが50%以上減った」と回答。さらに、半数以上の54.6%のホテル・旅館業が「売り上げの80%減」と答え、深刻な打撃を受けたことが示された。また、新型コロナについて、調査時点で「影響があり今後も続く見込み」との回答は全体で88.7%だったが、ホテル・旅館業ではこの回答が99.5%と際立っており、危機感の強さがうかがえる。
こうした背景があり、ホテル・旅館業では、接客を伴う他の業種に比べて、概してコロナ対策は高度化・先進化しているとみられる。温泉旅館の大浴場など、施設内の混雑状況が部屋に居ながらわかるようにするなどのアプリの導入も、いち早く実施された。
沖縄ハーバービューホテル(那覇市)では9月から、お客が室内で各種案内に手を触れることを最小限にするため、ウェブ接客ツール「プライムコンシェルジュ」の運用を始めた。
お客がスマホで施設内の情報を、専用のQRコードを読み取って確認できるので、アプリのインストールは不要になる。同ホテルを運営する株式会社ホテルマネージメントジャパン(東京都渋谷区)が9月9日に明らかにした。
「プライムコンシェルジュ」で、スタッフと接触することなしに館内インフォメーションが得られ、朝食会場でもあるレストランの混雑状況が確認できるほか、宿泊者限定のクーポン表示など特典利用にも使える。