社外取締役――。会社業務の意思決定を行う取締役会では、社内のしがらみにとらわれず、自身の豊富な経験や知見に根ざした、社外からの客観的な視点で経営陣にアドバイスする役職だ。
一般的には、お堅いイメージがあるかもしれないが、その名を冠した、株式会社「社外取締役」がある。同名のオンラインサロンの運営に加え、集まった会員と商品やブランドのプロデュース事業に乗り出すなど、言葉のイメージとは一線を画すユニークな取り組みを行っている。
この会社を立ち上げた中心メンバーの一人で、共同代表の林哲平さんに、立ち上げの経緯や事業のおもしろさを聞いた。
社名の「社外取締役」、なぜ?
株式会社「社外取締役」は、住宅フランチャイズを手がけるBETSUDAI Inc. TOKYO(ベツダイ東京支社)の林哲平さん、建築家・起業家の谷尻誠さん、セレクトショップBEAMS(ビームス)コミュニケーションディレクターの土井地博さんの3人で、2020年春に立ち上げた。3人とも本業に腰を据えつつ、いわば副業として取り組んでいる。
もともと3人は、本業とは別に事業の相談を受けることが多く、社外の立場でアドバイスや事業の企画を提案していた。本業と異なる分野や領域でも、自身の経験が役立つと感じていたという。なかでも谷尻さんが数年前から「これを事業化できないか」と考え、親交のあった2人に呼びかけ、今回の試みが具体化していった。
社名の「社外取締役」は、谷尻さんの発案だ。
林さんは、
「社外取締役は、英語にすれば、アウトサイダーディレクターズ。本業でもそうですけれど、アウトサイド(外側)の視点で見ると、よくわかることってありますよね。そして、柔軟な考え方ができ、いいサービスを生み出せるものです。3人とも大事にしていた外側の視点や立ち位置(アウトサイダー)に、仕事を指揮するディレクションが組み合わさったこの言葉は、私たちがやろうとしている活動内容にもぴったりでした」
と話す。
「社外取締役」では現在、オンラインサロン運営、会員と協力した商品プロデュース事業などに取り組んでいる。林さんたちが最も挑戦したかったのは、さまざまな会社やブランド、世の中のモノ・コトをプロデュースすることだった。そのためには、人の力を借りることが欠かせない。そこで、オンラインサロンに着目し、1期生を募集した。すると、個人会員100人の上限に対して600人を超す応募があり、法人会員(5枠=1枠5人)もすぐ埋まるなど、注目度は高かった。選考を経て集まった会員は、さまざまな業界、職種で活躍する人たち。性別や世代に偏りはないが、中心となっているのは20~30代だ。