禁じられているビフォー・アフター写真で宣伝
国民生活センターでは、まず、オンライン美容クリニックの多くが「ダイエットに効果がある」とうたっている薬剤が問題だとしている。
国内では2型糖尿病治療薬として承認されている薬剤「GLP-1受容体作動薬」を痩身目的で処方しているケースが多くみられるからだ。2型糖尿病とは、日本人の糖尿病のうち95%を占めるもので、主に運動不足や肥満などが理由で罹るとされているが、詳しい原因はわかっていない。遺伝性の要因もあり、家族に患者がいるとかかる確率が多いとされている。
「GLP-1受容体作動薬」を海外では肥満治療薬に使うケースもあるが、日本人の遺伝的特性に適合するかどうか確認されておらず、国内では糖尿病治療薬として以外の処方を認めていない。
つまり、適応外診療になるわけだ。医師は患者に対して品質と有効性、安全性が確認されたものでないことや、副作用に危険性があることを、きちんと説明する義務がある。
問題になっているケースでは、それらのことがほとんどなされていない。日本糖尿病学会も2020 年7月、オンライン美容クリニックで「GLP-1受容体作動薬」をダイエットのために処方するケースが後を絶たないため、
「一部のクリニックでGLP-1受容体作動薬を美容・痩身・ダイエット等を目的として処方する広告が散見されますが、日本人における安全性と有効性は確認されていません。医師とくに本学会会員においては、不適切な薬物治療によって患者さんの健康を脅かす危険を常に念頭に置き、誤解を招きかねない不適切な広告表示を厳にいましめていただきたい」
という警告を発した。
また、国民生活センターと日本糖尿病学会の強い警告を受けて、日本美容外科学会、日本抗加齢医学会、日本美容医療協会も9月3日、会員の医師たちに対して連名で次のような見解と声明を発表した。
「ビフォー・アフター写真や、費用を強調した広告など、オンライン診療ガイドラインに沿わない不適切な診療が行われていたクリニックがあります。痩身治療としては未承認の糖尿病治療薬(GLP-1受容体作動薬)を処方し、患者に自己注射させていたクリニックの中には、治療により生ずるおそれのある不利益、急病急変時の対応方針等について、医師から患者に対して十分な情報提供がなされていないと認められる事例がありました。私たちは、医療機関が医療広告ガイドラインやオンライン診療ガイドラインを遵守することなく、患者を誤認に導き、不安や健康被害を与える行為に断固反対します」
国民生活センターでは、
「使用する薬剤について『アメリカ、欧州で肥満治療薬として承認されている』『日本では厚生労働省の許可済みの糖尿病治療薬』といった表記には十分注意しましょう。国内では、現在、痩身(ダイエット)目的の使用に関して承認されている医薬品はないのですから」
と呼びかけている。
(福田和郎)