「サイバーポリス」は看板倒れ!? 強制力、監視力ともに弱く、ホントの狙いはどこに......(鷲尾香一)

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   警視庁サイバーセキュリティ対策本部が2020年8月26日、LINE、メルカリ、中央大学と共同で、インターネット上でのトラブル回避に必要な知識や正しい情報の見分け方などを提供するLINE公式アカウント「CYBER POLICE」(サイバーポリス)を開設した。

   近年、SNSを利用した個人に対する誹謗中傷やデマ情報などが社会問題化しており、若者を中心としたサイバーセキュリティ教育や被害防止などの啓蒙活動を進めていく場が求められていた。

  • 「ええっ…… なんで、こんなことに……」
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「7つのコンテンツ」から得られる情報

   警視庁とLINE、メルカリ、中央大学の4者は2019年12月に締結した「サイバーセキュリティ人材の育成に関する産官学連携についての協定」に基づき、LINEを通して青少年向けのサイバーセキュリティ教育や、その中核を担う人材の育成に継続的に取り組むべく、警視庁を主体として啓発活動を行う「CYBER POLICE」の開設に至った。

   このアカウントは広くネットに関する知識の向上を図り、サイバー犯罪に巻き込まれないための情報を提供し、被害防止の底上げを行うことを目的としている。

   「CYBER POLICE」の具体的なコンテンツは、

(1)警視庁から、現在発生しているサイバー犯罪などの注意喚起を登録ユーザー全員へ情報発信する。
(2)アカウントの利用開始時に受け取りたい情報を登録することで、セグメント配信機能を活用し、それぞれの要望に沿った情報を提供する。
(3)「サイバー犯罪情報」を選択すると、インターネットを利用するすべての人向けにサイバー関連犯罪被害防止情報を発信する。また、学生向け、保護者向け、一般社会人向けなど特定のターゲット層向けに配信内容を変えることも予定している。
(4)「サイバーセキュリティ教育に関する情報」を選択すると、サイバーセキュリティに関する諸情報を月に1回程度情報提供し、大学生を中心とした学生によるトラブル防止、モラル向上およびリテラシーを強化する。
(5)「SNSの利用に関する情報」を選択すると、LINEが取り組んできた情報モラル教育の教材コンテンツをベースにネットの特性の理解を深め、ネット上でのコミュニケーショントラブルを防止することを目的とした啓発情報を配信する。
(6)「フリマアプリの安全利用に関する情報」を選択すると、メルカリが取り組んできたフリマアプリ教育プログラムのコンテンツをベースに、CtoCサービスの仕組みや安心・安全な利用方法について情報発信を行う。
(7)警視庁からはサイバー関連犯罪やトラブルに対する対処法、中央大学からはサイバーセキュリティを大学で学ぶ場合の情報、メルカリからはフリマアプリを安心・安全に使うための情報、LINEからはSNS利用の心得としてネットリテラシーに関する情報をチャットボットで24時間いつでも入手することができる。

――の7つがある。

「新型コロナに効く」!? 根拠のない情報に注意呼びかけ

   確かに、SNS上の誹謗中傷やデマ情報などにより、個人が精神的な被害を受け、自殺に追い込まれるケースなどが大きな社会問題となっている。つい最近もある女子プロレスラーが、テレビ番組での言動などをめぐりSNS上で誹謗中傷を受けていたとされ、それを苦に命を絶ったことが知られるところとなった。

   こうした事態に対しては、総務省が対策の検討を進めており、「発信者情報開示の在り方に関する研究会」は8月28日の中間とりまとめで、誹謗中傷の書き込みなどをした投稿者の「電話番号」を開示請求の対象とする方針を示していた。総務省は8月31日に省令を改正。電話番号を開示対象に追加した。

   さらに新型コロナウイルスの感染拡大により、ネット上ではさまざまなデマ情報が溢れている。たとえば食品や医薬品、家電などでは「新型コロナウイルスに効果がある」などの、医学的な根拠のない商品PRが数多く見られ、消費者庁などはこうした商品のPRに是正を求めるとともに、消費者に対して注意を呼びかけている。

   ただ、残念ながら、この「CYBER POLICE」は「ポリス」と銘打ちながらも、こうしたSNSの上の誹謗中傷やデマ情報などに対して強制力を持つものではない。また、監視力としてもまだまだ弱く、基本的にはネットのリテラシーに対する教育や啓蒙活動を行うためのツールに過ぎない。

   そして、さらに残念なのは、この「CYBER POLICE」をLINE上で見つけるのが非常に面倒な点だ。筆者もLINEの画面で探したのだが、結局見つけることができず、検索してどうにか見つけた。

   政府が新型コロナウイルスの感染拡大防止のために実施している感染者との接触確認アプリ「COCOA」にも言えることだが、使い勝手が良いこと、さらに知名度が高く、登録者が多いことが、こうしたアプリの場合には非常に重要だ。

   果たして、アプリの利用者は増えていくのだろうか――。このまま「学習」のためのツールで終わってしまうようであれば、残念すぎる。(鷲尾香一)

鷲尾香一(わしお・きょういち)
鷲尾香一(わしお・こういち)
経済ジャーナリスト
元ロイター通信編集委員。外国為替、債券、短期金融、株式の各市場を担当後、財務省、経済産業省、国土交通省、金融庁、検察庁、日本銀行、東京証券取引所などを担当。マクロ経済政策から企業ニュース、政治問題から社会問題まで、さまざまな分野で取材。執筆活動を行っている。
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