みなさんは、接待や会食に招かれることはありますか?
慣れてしまうと別れ際に口頭でお礼を伝えただけで終わらせてしまうことがあります。もちろん、口頭でお礼を伝えることは大切です。しかし、年齢を重ねたベテランだからこそ、感謝の気持ちを言葉や態度だけでなく、目に見える品物などでも伝えたいものです。感謝の気持ちを、より鮮明に伝えられます。
「知らないと恥をかく50歳からのマナー」(西出ひろ子著)ワニブックス
大前提は相手の荷物にならないこと
筆者は「手みやげ」を準備しています。本来、招待された側は手ぶらでもいいのですが、一方的にもてなされることに申し訳なさを感じるのであれば、手みゃげは便利です。渡すタイミングは帰り際。会食中は相手の荷物にならないようにする配慮が必要です。
では、どのような手みやげを用意することが望ましいのでしょうか――。著者の西出ひろ子さんは、次のように言います。
「重たすぎない個包装されたお菓子がベストです。いくら心が込もった手みやげでも、重量があったり、大きすぎる手みやげは、持ち帰る際にかえって迷惑になる可能性があります。相手が、クルマやタクシーであればまだ良いのですが、電車などの場合は、『持ち帰るのに負担のかからない大きさと重量』を念頭に選びましょう」
さらに西出さんは、
「会社関係者の場合は、翌日、会社に報告をかねていただいた手みやげを持っていくこともあります。そうしたことを考えたら、『個包装されたお菓子』が無難です。また、おやすみの人のことを考慮すれば、ある程度の日持ちのするものを選ぶことも大切です」
と、説いています。
筆者はおみやげを戦略的に考えるべきと考えています。しかし、残念ながら、多くのビジネスパーソンはおみやげの効果を理解できていません。
大切なことは、相手の先にいる人物を想像することです。取引先の部長に気に入られたいなら、部長の先にいる人物、つまり部長の奥様やお子様を喜ばせることを意識しなければいけません。料理用のカロリーオフオイルや、子供が好きなケーキなら嫌がられることはありません。
これは、初めての訪問先や謝罪の場面でも有効です。女性社員が多い会社であれば、行列ができる人気のスイーツを選んで持っていくべきでしょう。社長が食べなくても、手渡したスイーツはそのまま秘書や会社のメンバーで消費されることが容易に想像できます。社員がスイーツのことを知っていれば、「わざわざ並んで買ってきてくれた」ことが第三者の口から社長に伝わる可能性があります。これほど好印象を与える方法はありません。
お刺身のおいしい食べ方、わかりますか?
山葵を醤油に溶く人がいますが、新鮮なネタならネタに山葵をのせて風味を味わいながら食したいものです。中高年のベテランなら、理にかなった食べ方をマスターしたいものです。
西出さんは、
「お刺身は、味の淡泊なものから濃いものへと箸をすすめるのが基本です。したがって、白身と赤身があれば、白身から食べるほうが素材の味がよくわかり、よりおいしくいただけます。山葵は醤油に溶かさずに、香りや風味を楽しむために、お刺身の上に少しのせて食べるといいでしょう」
と言います。
「食べるときは、醤油を垂らさないように、小皿を口元まで近づけて食べると安心です。懐紙があれば、それを小皿代わりに使用してもいいです。お刺身に添えられたつまやしそは飾りではなく、魚の生臭さを消すためのもの。また、消化を助ける役割もあるので、お刺身と一緒に、もしくは交互に食べるといいでしょう」
ここで覚えておきたいのが、「懐紙」です。茶事で使用されている、懐に忍ばせておく小さめの和紙で、器の飲み口を拭きとったり、菓子器に盛られた菓子を受け取ったり、食べきれなかったお菓子を包んだりするのに使います。
「『ふところ紙』『たとう紙』ともいいます。お茶席以外でも、小皿の代わりにしたり、口元の汚れをおさえたり、お金を包んで渡したりなど、さまざまな使い方がされています。特に正式な和食の席では、洋食のように紙ナプキンが用意されていませんので、何枚か持参するのが女性のたしなみのひとつとされています」
と、西出さん。
本書では年齢を重ねたことで初めて遭遇するマナーの根本的な本質論から実践までを、豊富なイラストとともにわかりやすく紹介しています。(尾藤克之)