倒産寸前の石原プロを立て直し 「経営者」渡哲也さんが遺した「ツートップ」の神髄(大関暁夫)

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渡さんには裕次郎さんへの絶対的な敬服の念があった

   兄弟ツートップの場合は一層、敬意の念が失われがちです。兄がトップなら、弟は弟という理由だけでナンバー2に甘んじることの理不尽さから、必要以上のライバル心を煽ることになりがちです。逆に弟がトップなら、兄は自分が兄なのになぜ弟の下につかなくてはいけないのか、となるわけです。

   友人ツートップの場合には、さらに微妙です。形式上どちらかがトップを務めるわけなのですが、たとえば会社の保証人になるなどの現実に引っ張られてトップの責任感が増し、それが言動の端々に出ることでナンバー2の不満を呼び起こし、「袂を分かつ」というようなケースも複数見てきました。

   渡さんの場合には、裕次郎さんへの絶対的な敬服の念があって、そして彼をナンバー2として引き立ててくれたという恩義がそこに重なり、もっともいい形でツートップ経営が形づくられ、二人三脚でヒット作を連発して瀕死の石原プロを見事に蘇らせたと言えるのではないでしょうか。

   2020年7月、石原プロは来年1月での会社の解散を発表。オヤッと思わせる向きもあったのですが、渡さんの訃報でその謎が解けた気がします。石原プロは「裕次郎=渡の心のツートップ」があっての企業。渡さんは裕次郎さん亡き後も社長の座を継いで会社を支え、またその退任後も陰になり日向になり会社を支えてきたことがうかがわれます。

   渡さんの訃報に、成功に向かう会社経営のひとつのあり方を思い起こさせていただきました。心よりご冥福をお祈り申し上げます。(大関暁夫)

大関暁夫(おおぜき・あけお)
スタジオ02代表。銀行支店長、上場ベンチャー企業役員などを歴任。企業コンサルティングと事業オーナー(複合ランドリービジネス、外食産業“青山カレー工房”“熊谷かれーぱん”)の二足の草鞋で多忙な日々を過ごす。近著に「できる人だけが知っている仕事のコツと法則51」(エレファントブックス)。連載執筆にあたり経営者から若手に至るまで、仕事の悩みを募集中。趣味は70年代洋楽と中央競馬。ブログ「熊谷の社長日記」はBLOGOSにも掲載中。
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