銀行に多い理不尽な「ブラックボックス人事」
さて、銀行・証券業界ともにスコアが2.8と低かったのが「人材の長期育成」だった。各社の社員クチコミを見ていくと、二つの問題点が浮かび上がる。一つは、金融業界特有の3年程度で異動する「ジョブ・ローテーション」が専門性を高めにくくしている。
これは、免許制度の金融機関に対する金融庁の監督指針で、顧客との癒着や不正を防ぐのが目的だ。ただし現在は、廃止する動きになりつつある。それに加え、とくに銀行に多い決定経緯が不明瞭な「ブラックボックス人事」がキャリア形成を難しくしているといった声が多く見られた。「ブラックボックス人事」は、ドラマ「半沢直樹」にもよく登場する「奥の院」と呼ばれる上層部で唐突に決まる理不尽な人事のことだ。この二つについて、匿名での声を拾うとこうだ。
大手証券会社C
「一部の部門や雇用形態を除けば、ジョブ・ローテーションが前提となるため、一つの分野で同じことを積み上げるプロフェショナル型のキャリアを長期に築いていくことが評価されにくい。もし、プロフェショナル型のキャリアを追求する場合には、解雇されるケースも少ない『プロフェショナル型契約』としたほうがリターンは大きい気がする。部長クラスになると、銀行からの出向者が多く、証券プロパーで管理職のポジションを担う人材は、支店等の一部の部署を除けば少ない印象」(投資銀行分野、男性)
大手銀行A
「銀行の人事は完全にブラックボックス。いつどこに異動となり、どうしてそこに異動になったのかは、当事者は知ることができない。そんな中でキャリアの開発ができるとは到底思わない」(法人営業、女性)
大手銀行B
「人事異動についてはブラックボックスな面が否めない。現時点で自分がどのように評価されているか、直属の上司から伝えられることは滅多になく、それは異動で何となくわかる程度。無数の部門、部署が存在しており、配属リスクが存在することも否めない。当初希望していた業務をできている人間はごく少数だろう。また、定期的な異動は部門を跨ぐことも珍しくなく、結局何が強みなのかわからない人材になってしまうこともありえる」(総合職、男性)
こうして見ると、「出向」が銀行員生命の終わりであるかのように描かれる「半沢直樹」の世界は、あながちウソではなかったようだ。
なお調査は、銀行・証券計8社の口コミ情報約5万3000件を、「待遇の満足度」「社員の士気」など8項目で、それぞれ5段階で評価した。
(福田和郎)