新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、2021年春に卒業する大学生、大学院生の就職戦線は大きな混乱が生じているが、外国人留学生の就職活動も大きな影響を受けている。
就職情報のディスコ(東京都文京区)の調査によると、2020年7月時点の内定率は、日本人学生が77.7%と7割を超えているのに対し、外国人留学生は31.5%にとどまることがわかった=下グラフ参照。2020年8月26日、「外国人留学生の就職活動状況」を発表した。
調査では、比較可能なデータは、日本人学生や海外の大学で学ぶ日本人留学生の調査データを引用しながら分析。前年同期(40.6%)と比べても10 ポイント近く低下。内定取得者も含めると、就職活動を続けている外国人留学生は全体の79.3%にのぼり、日本人学生(37.9%)の2倍近い。
企業との「出会い」減った
調査では、外国人留学生が新型コロナウイルスの感染拡大によって、自身の就職活動に影響を受けたと思うか、を聞いた。「とても影響がある」との回答が53.9%と半数を超え、「やや影響がある」(37.9%)と合わせると91.8%を超える。
コロナ禍の就活で、具体的な影響として最も多い回答は「企業との出合いの機会が十分に取れない(減った)」が53.6%を占めた。次いで「採用数の減少などで、志望業界の変更を余儀なくされた」が48.4%で続く。また、「志望企業の採用が中止になった」は26.8%で、4人に1人以上にのぼった。
ホテルや旅行業など、外国人留学生に人気の高い業界とコロナの影響を大きく受けた業界が重なったことで、志望業界や企業の変更を迫られた人も少なくない。
外国人留学生からは、
「学内の留学生向け合同企業説明会はコロナの影響で中止されました。留学生を積極的に採用する企業に出合う機会がなくなりました」(中国出身)
「外国人向けの採用が少なく、学校のキャリアサポートセンターにも行けない状態では就職活動が困難です」(中国出身)
「いくつか行きたかった中小企業が新卒採用しなくなった」(中国出身)
「自分の語学力が活かせる旅行、空港、航空業界が採用をほとんどやめてしまい、業界研究を改めてしなければならなかった。また、説明会の中止で、社員と話せるチャンスもなくなり、会社について理解が足りなくなった」(韓国出身)
「コロナの影響で採用中止している企業もたくさんあって、採用はする企業でも、選考が延期になったり、日程変更が頻繁にあったりして、スケジュール調整や管理がとても難しかった」(マレーシア出身)
といった声が寄せられている。
外国人留学生の85%超が「厳しい」
内定率が悪化している原因のひとつ、外国人留学生が就職活動を開始した時期をみると、「4年生の4月」が17.2%で最多。次いで、「3 年生の3月」(13.4%)となった。採用広報の解禁にあたる3月以降を合わせると、47.2%と約半数。「6月以降」も12.5%あり、新型コロナウイルスの感染拡大の影響で、就活のスタートが遅れた留学生もいるようだ。
一方、日本人学生では「3年生の6月」が最も多く24.7%。採用広報の解禁の3月より前の合計が96.6%と、9割を超えている。
新型コロナウイルスの感染拡大の影響とともに、外国人留学生は日本人学生と比べて就活の動き出しが遅いことがわかった。
また、外国人留学生の調査時点(7月)でのエントリー社数は、平均22.5社。日本人学生の29.2社より、6.7社少ない。ただ、エントリーシートの提出社数や筆記・WEB試験の社数は、日本人学生をやや上回る。外国人留学生が志望企業を絞ったうえで精力的に活動している様子がうかがえる。
今年はコロナ禍の影響で、就活のオンライン化が進展。WEBセミナー経験率は90.8%、視聴社数は平均12.8 社にのぼる。WEB面接の経験率は74.9%を占める。受験社数は平均7.0社だった。
自身の就活の難易度を聞いたところ、外国人留学生からは、
「コロナによる採用中止の連絡が多くの企業から来ていますが、もうエントリーの時期はすぎてどうしようもないです」(中国出身)
「会社に入るには、日本語力だけでなく、協調性やコミュニケーション能力、会社に対する熱意など様々なことが求められていますので、厳しいと思います」(中国出身)
との声があがった。
外国人留学生は「とても厳しい」の44.9%と「やや厳しい」の40.2%を合わせた85.1%が「厳しい」と回答。一方、日本人学生は59.8%(合計)が「厳しい」と答えており、多くの外国人留学生にとって、かなり厳しい就職戦線であるといえそうだ。
外国人留学生の不安「母国へ帰れない」「卒業延期かも」
さらに、外国人留学生全般に困っていることや不安に思うことを聞くと、
「アルバイト先が休業になり、働けなく、学費や生活費が心配です」(ベトナム出身)
「今、修士論文を書くことが重要だけど、図書館も利用できない。このままいけば、卒業延期かもしれない」(中国出身)
「今まで約5か月家にこもっています。日本人とのコミュニケーションが取れなくて、語学力が低下しています」(中国出身)
「将来のキャリアプランについて、家族としっかりと話したいですが、帰国できない状態なので、難しいです」(台湾出身)
「就職先が決まらないまま卒業した後、在留期間を伸ばすためにどうすればいいのかちょっとわからないです」(マレーシア出身)
との声が寄せられた。
調査によると、最も多いのは「母国に帰れない」で43.7%。感染リスクに加え、再入国できなくなることへの懸念などから、母国に帰省したくてもできない留学生が多いようだ。
次いで、「アルバイトができない」が39.1%と多く、「学費や家賃が払えない」「奨学金や学生給付金がもらえるか」「母国からの仕送りが減った」などの項目にみられるように、経済的困窮を訴える声は少なくない。
なお、調査は2021年3月卒業予定の外国人留学生(現在、大学4年生、大学院修士課程2年生)を対象に、インターネットで2020年7月3日~19日に実施した。サンプリングは、 キャリタス就活2021に登録している外国人留学生2849人。回答数は343⼈。