安倍首相辞任で株価「セオリー」どおりの急落 週明けはどうなる?

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   東京株式市場の日経平均株価は2020年8月28日、前日比326円21銭安の2万2882円65銭で引けた。安倍晋三首相の突然の辞任報道で「売り」が加速。この日は一時、前日比167円27銭高の2万3376円13銭まで上昇する場面があったが、ニュースが流れると急落した。東証株価指数TOPIXも前日比マイナス11.02の1604.87だった。

   安倍首相は潰瘍性大腸炎の持病があり、第1次安倍政権では2007年7月の参院選で大敗後に体調が悪化。約1年で突然、退陣した経緯がある。一国の首相や大統領の辞任は株価にはマイナス材料になる。一般的には値下がりするのがセオリーとされるが、今回もそうなのか――。

  • 安倍首相が辞任 週明けの株価はどうなる?(2020年8月28日撮影)
    安倍首相が辞任 週明けの株価はどうなる?(2020年8月28日撮影)
  • 安倍首相が辞任 週明けの株価はどうなる?(2020年8月28日撮影)

安倍首相の辞任、2007年9月のときは......

   日経平均株価は8月28日、3日続落。好調な米国株の流れを受けて前場(午前)は寄り付きでは買いがやや上回ったが、ムードは低調で一進一退で推移。後場(午後)に入ると一時、前日比167円27銭高の2万3376円13銭まで上昇したが、これを高値に下落に転じ、「安倍首相辞任の意向」のニュースが流れると加速度がついた。安値は2万2594円79銭(前日比614円07銭安)。

   安倍首相は新型コロナウイルス感染症対策などによる疲労の蓄積がささやかれるなか、17日、24日と2度にわたり東京・信濃町の慶応大病院を訪れ、、健康不安が指摘されていた。28日17時から、首相官邸で2か月半ぶりの記者会見に臨み、自身の体調面などについても説明した。

   この日の株価は、安倍首相の辞任報道への思惑がからんで推移。東証マザーズでも幅広い銘柄が下落した。

   安倍首相の突然の辞任は、2度目。前回は2007年7月の参院選の歴史的大敗から約1か月半後に、「続投」に固執していたにもかかわらず、辞任を発表した。首相の辞任は政治的な混乱やそれによって招く社会・経済の不安定さから、株価にはマイナス材料となり値下がりするのが、セオリーとされる。

   ところが、当時は「安倍首相、突然の辞意」のニュースが流れた2007年9月12日13時ごろには日経平均株価が100円ほど値を上げていた。終値では前日比80円安の1万5797円60銭とセオリーどおりに収まったものの、13日には前日比23円59銭高い1万5821円19銭で、小幅だが反発していた。

「アベノミクス効果」は持続する?

   安倍首相の辞任に、日興アセットマネジメントのチーフ・ストラテジスト、神山直樹氏は、

「第一次安倍内閣での安倍氏辞任の発表では、株価は外部環境につられ、その後しばらく上昇しておりインパクトはありませんでした。今回は当時に比べ安倍氏の重要性は高いと思われるものの、実際にはコロナショック後の対応で個性を発揮することは難しく、支持率低下もあって、センチメントが落ち着けば経済や市場への影響は限定的と考えます。
アベノミクスで知られ他国に比べ安定した政権が続いたことから、外国人投資家にはネガティブな印象を与えると思いますが、買いがしばらく細る恐れはあるものの、長期的な売りを招くとは考えません。次の政権ができるまで、模様眺めとはなりそうです」

と、コメントしている。

   また、マネックス証券チーフ・ストラテジストの広木隆氏は、

「(安倍首相辞任が株価に与える影響は)限定的なものにとどまるだろう。『アベノミクスの終焉』を材料にした売りは、きょうの初動で出尽くしたか、週明けに海外からの売りがあっても短期で収束するだろう。
その理由は、日本の株式市場を動かす要因の大半はグローバルな経済環境であり、日本の政権が変わってもグローバルな経済環境への影響は大きくないからである。無論、政治や政権の安定は株価の材料になる。ただ、あくまでもその政権、政府による政策が経済をどう動かすかを市場が評価して株価が動く」

   とみている。

   「安倍首相辞任」は、株価にとってプラス材料でないのは確かだが、影響は限定的。焦点は「ポスト安倍」に移るが、衰えてきたとはいえ「アベノミクス」の効果から、財政や金融などの政策は踏襲されるとの見方が支配的で織り込み済み。そうなると、株価にとって気になる材料は外国人投資家の動向にありそう。

   まずは、週明けの東京株式市場に注目だ。

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