人生100年時代のキャリアの積み上げ方
そんなバリキャリ部長ですから、もちろん、「お金があれば、家事労働の時間も買える」といった考え方なのです。
M央さんは、
「部長やバリキャリ志向の先輩女性たちって、自力で完璧なパフォーマンスができないのなら、お金出してプロにやってもらうって。『家事』も仕事と同じスタンスでとらえているみたいなんですよね」
と、ちょっと呆れぎみです。
そもそも、「キャリア」とは何でしょう――。厚生労働省によると、キャリアとは「時間的持続性ないしは継続性を持った概念」(「キャリア形成を支援する労働市場政策研究会」報告書)と定義づけています。就職や出世、現在の仕事などの結果ではなく、「働くことへの継続的なプロセスや、働くことにまつわる生き方そのもの」をいうようです。
つまり、女性の働き方が多様化する中で、今の「バリキャリ」という働き方は、バリキャリ部長のような女性が切り拓いてきたおかげで、定着した女性の働き方のひとつです。
しかし、時代は令和。バリキャリ部長が歩んできたような、女性がバリバリ懸命に働かなければ認めてもらえなかった時代と「今」とでは、は大きく違います。人生100年時代。会社も「人生100年時代のキャリア構築」の研修を用意する時代です。
M央さんは言います。
「私なんてまだ30だから、先がすごく長く感じます。マラソンじゃないけど、早い段階でバリバリやって飛ばしすぎちゃって、途中で息切れしたりとか、家事をお金で買って、手元にお金なくなっちゃったりとか。なんかそういうのがイヤなんです。仕事も家事も、そこまで力まなくても、もっと当たり前な感じで淡々とやっていきたいなと思うんです。バリキャリになる前に、『フツ~の生活を送る人』になりたいんですよね」
M央さんが、そう感じるように、いつも「バリキャリ」だと疲れますよね。それに最近では、男性もふだんからご飯を作ったり、お掃除をしたり、最低限の家事を当たり前と思ってご自分でやる方が増えています。昭和時代のような、家庭を顧みない「企業戦士」「モーレツ社員」の男性もまた激減しているのです。
もうおわかりですね。
バリキャリ部長のような女性たちが布石を作ってくれたおかげで、女性の働き方、キャリアの積み上げ方の選択肢が増えた現代は、キャリアへの向き合い方も次のステージに入っています。生きていくうえで当たり前の「家事」を誰かに丸投げし、「ふつうの生活」をなげうってまでバリバリ働くスタイルは、もう過去のもの。
これからは「バリキャリ」である前に、「ふつうの生活を送る人」であることが、新しいキャリアウーマンのスタイルなのかもしれません。
【きょうの格言】「バリキャリ」である前に、「ふつうの生活を送る人」になろう
それでは、また次回。(丸ノ内ミカ)