消費税減税も効果薄? 老舗百貨店が大量閉店、雇用維持を求め「マネキン」が座り込み(神木桃子)

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老舗百貨店が閉店セール

カールシュタットのショーウィンドウは閉店セール一色(筆者撮影)
カールシュタットのショーウィンドウは閉店セール一色(筆者撮影)

   それは先日、デュッセルドルフの中心部へ買い物に出かけたときのことです。日本人街と呼ばれるエリアからほど近いシャドウ通りには、古くから親しまれている百貨店がふたつあります。ひとつはガレリア・カウフホーフ(Galeria Kaufhof)、そしてもうひとつはカールシュタット(Karstadt)。どちらもドイツ人なら誰でも知っていると言えるほどの老舗百貨店です。

   元々はライバル同士でしたが、2019年に経営統合し、ドイツ最大の百貨店グループ、ガレリア・カールシュタット・カウフホーフ(Galeria Karstadt Kaufhof)となっています。

   セール品でも物色しようと思っていたのですが、目に飛び込んできたのはショーウィンドウに貼られた「この店舗を閉めます」、「全品売り尽くし」というポスター。それが通りをはさんで立ち並ぶどちらの店舗にも貼られているのです。

   オンラインショップとの激しい競争にさられている百貨店業界。コロナ危機による売り上げ不振がさらなる追い討ちとなり、ガレリア・カールシュタット・カウフホーフはついに経営破たん。現在、破産手続きを進めています。

   その一環として、6月中旬に発表された事業再編計画によって、ドイツ国内172店舗のうち、62店舗の閉鎖が決定しました(8月に閉鎖対象は50店舗へ削減)。

カールシュタット正面玄関の前に置かれたマネキン。後ろのガラス戸には従業員一人ひとりからのメッセージが貼られている(筆者撮影)
カールシュタット正面玄関の前に置かれたマネキン。後ろのガラス戸には従業員一人ひとりからのメッセージが貼られている(筆者撮影)

   この閉鎖対象に、このシャドウ通りの2店舗も含まれていたのです。カールシュタットの正面玄関に向かうと、マネキンが2台、座った姿勢で置かれています。近寄ってみると、どちらも首からプラカードを下げており、それぞれ、このような文章が書かれていました。

「私はカールシュタットの従業員です。2020年11月1日から失業者となります」
「2020年10月31日をもって扉が永遠に閉ざされてしまうのであれば、私たちは座り込みをします」

   これは閉鎖に抗議する従業員が設置したもので、どちらのプラカードにも、お客に向けて次のようなメッセージがつづられていました。

「どうかレジで署名をして私を助けてください。それかBerliner Arzteversorgung(建屋のオーナー)に家賃を下げるようメールしてください。それによってシャドウ通りにある私たちのカールシュタットは維持されます」

   私がこのマネキンの写真を撮っていると、カールシュタットの従業員の男性が声をかけてきました。彼は北ドイツの店舗で働いているそうで、おそらくヘルプとして来ているのでしょう。会社の方針に納得がいっておらず、

「この店には50人もの従業員がいるんだ。ひどい話だよ」

とこぼしていました。

   わたしもカールシュタットを利用していたひとり。自分ができるせめてものことはしようと、入口にある署名用紙に名前を記してきました。しかし、店内は売り尽くしセール中だというのにお客の入りはまばら。なんともいたたまれない気持ちになりながら、家路につきました。(神木桃子)

高橋 萌(たかはし・めぐみ)
高橋 萌(たかはし・めぐみ)
ドイツ在住ライター
2007年ドイツへ渡り、ドイツ国際平和村で1年間の住み込みボランティア。その後、現地発行の日本語フリーペーパー「ドイツニュースダイジェスト」に勤めた。元編集長。ドイツ大使館ブログでは「ドイツ・ワークスタイル研究室」を担当。サッカー・ブンデスリーガ大好き。日本人夫とバイリンガル育児に奮闘中。
Twitter: @imim5636
神木桃子(こうぎ・ももこ)
神木桃子(こうぎ・ももこ)
ドイツ在住ライター
島根県生まれ、東京・多摩育ち。物事の成り立ちを知りたいと大学では有機化学を専攻。小売業界でのオーガニック製品や地域産品のバイヤーを経て、2014年よりドイツに移住。「もっと心地よくグリーンな暮らしへ」をテーマに、ドイツのマーケット情報やトレンド、ライフスタイルについて執筆活動中。3歳になる娘と日本人の夫との3人暮らし。
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