新型コロナウイルスの感染拡大が収まらないなか、苦境にたつ観光業界の支援のために始めた「GoToトラベル」キャンペーン。
開始して1か月たった2020年8月25日、赤羽一嘉国土交通大臣は「延べ420万人が利用した」と成果を強調したが、本当に効果はあったのか、疑問の声があがっている。
主要紙の論調とネットの声を拾うと――。
菅官房長官と赤羽国交大臣、これだけ違う「効果」の数字
2020年7月27日から始まった「GoToトラベル」キャンペーンの効果がどれほどのものだったのか。8月25日と26日の主要メディアの報道を総合すると、効果の発表について異例の展開を見せた。
まず利用者数については、8月24日に菅義偉官房長官が「これまでに少なくとも延べ200万人が利用した」と発表したが、翌25日に担当大臣の赤羽一嘉国土交通相が急きょ記者会見を開き、「少なくとも延べ約420万人が利用した」と菅官房長官の2倍以上の数字を発表したのだった。
政府を統括するスポークスマンである官房長官の発表内容を所轄大臣がすぐさま否定するのは異例だ。記者団からそのことを聞かれた赤羽国土交通相は、こう答えた。
「菅官房長官が言及した人数は、大手業者などに限定して8月13日までの利用者を調べたもの。今回は大手に加え中小の旅行会社も含めた事業者に聞き取りした人数で、期間もお盆休みをすべて含む8月20日までにのばした。ただし、速報値で正確な数字は9月に発表する」
と、あわてて発表したのは明らかだった。また、菅官房長官はGoToトラベルの効果については、
「効果の検証には、データがそろうのをもう少し待つ必要がある」
として明言を避けたのだが、赤羽国土交通相は、
「順調なスタートだ。7、8月はそれなりに効果があった」
と強調したのだった。2人とも同じ観光庁のデータを元にしているのだが、なぜわずか1日で、こうも数字と評価が食い違ってくるのか。
また8月25日、公明党の山口那津男代表が記者会見で「GoToトラベル」をめぐり東京都を除外していることを批判し、東京都を対象に加えてほしいという観光業者の声を紹介しつつ、
「感染状況を見極めて柔軟な対応を期待したい。東京都のボリュームを考えれば一層、苦境に立つ観光業に対する応援の役割を果たすのではないか」
と訴えたのだった。
赤羽国土交通相は公明党出身の大臣だ。山口代表の援護射撃と考えられる。山口代表の提案に呼応するかのように8月26日午前、西村康稔経済再生担当相は衆院内閣委員会で、「GoToトラベル」に東京を対象に追加するかどうかについて、
「専門家の意見を聞いたうえで9月に判断したい」
と、事実上、対象に加える考えを示した。菅官房長官が「小池百合子東京都知事憎し」のあまり、国土交通省の反対を押し切って東京都を「GoToトラベル」の対象から除外したといわれる。また、菅官房長官と西村大臣もことあるごとに対立してきたといわれている。