お茶の間で人気のイケメン俳優、高橋一生さんが「なんだし なんだしAGC!」のリズムに乗ってカニのように横歩きするテレビCMが、頭から離れない。
100年以上続く、ガラス・土石製品の旭硝子が2018年7月に社名変更した「AGC」のイメージCMで、オカタイ印象が「変わった!」。おそらく、好感度がアップしているだろう。CMの狙いどおり、かなり刷り込まれてしまったようだ(笑)。
ところが......。「『なんだし なんだし』って、ガラスメーカーなんでしょ」。てっきりそう思っていたら、とんでもなかった。
ガラスメーカーが新型コロナウイルスのワクチン!?
2020年7月30日付の日本経済新聞「そこが知りたい」に、こんな問いがあった。「ガラスメーカーが医薬品の製造受託を手掛けているのはなぜですか?」――。これにAGCの島村琢哉社長が、こう答えていた。
「ガラスの原料を自社で調達するために始めた化学品事業がきっかけだ。化学の合成技術は医薬にも応用できる。1980年代に製薬会社向けに抗菌剤用の化学物質の受託製造をし、治療薬向けなどに品目を広げてきた。主力のガラスは安価な中国製品が増えて収益性が低くなった。新たな事業の柱をつくるために医薬品を中心に多角化を進めている。そのうえで、新型コロナウイルスのワクチンや治療薬候補の受託製造も始める」
思わず声を挙げて、驚いた。そして、すぐに調べた。
会社四季報最新銘柄レポート2020年7月29日号によると、AGCはガラス事業では世界大手で唯一の総合メーカーで、現在の事業の「柱」は、(1)建築用や自動車用のガラス事業(2)液晶用ガラス基板やディスプレー用の電子事業(3)クロールアルカリやフッ素系樹脂、医薬品の受託製造などの化学事業」――の3本。その「稼ぎ頭」はガラス事業ではなく、じつは化学事業なのだ。
足元では合成石英ガラスや半導体用フッ素系樹脂、部品まで5G、「高速大容量」「高信頼・低遅延通信」「多数同時接続」の特徴をもつ第5世代移動通信システムに関連する投資を拡大している。
加えて、8月15日付の日本経済新聞には「AGCは米ノババックス社から製造を受託した新型コロナウイルスワクチンの能力を高める補助物質『アジュバンド』について、生産量を1.5倍に拡大する」との記事が掲載されていた。
知らなかった......。