文大統領と安倍首相は「敵対的共生」のよきパートナー
韓国メディアはすでに、安倍政権をすっかり「死に体」(レームダック)と見なす見出しのオンパレードだ。たとえば、こんな案配だ。
東亜日報(8月23日付)「やつれた安倍氏、3日間の休暇を終えて公務復帰」
中央日報(8月24日付)「新型コロナ一発でぐらつく安倍首相...色あせた過去最長寿首相記録」
中央日報(8月24日付)「安倍首相、最長在任記録した日にまた病院へ...緊張する官邸」
朝鮮日報(8月24日付)「安倍首相、ほろ苦い最長連続在任...国民の半数『年内に辞任すべき』」
文政権に批判的な姿勢を貫き、安倍政権との対話を呼びかけてきた保守紙の朝鮮日報でさえ、8月23日付の「コラム:萬物相 安倍の墜落」で、安倍首相を激しく酷評している。
「コロナ防疫の大失敗で安倍首相の支持率は最低を記録した。『ネズミでも使わない』といわれる布マスクを配布したが、逆に笑いものになった。大腸疾患まで再発した。周辺からは『非常に顔色が悪い』『近く辞任する』などの声が聞かれる。権勢は10年持たないと言われるが、その墜落はあまりにも急激かつ劇的だ。安倍首相は国内での人気が高いときでも周辺国、特に韓国での人気が最悪だった。外国指導者の好感度調査では金正恩(キム・ジョンウン)氏でさえ9%だが、安倍首相は3%だ。一言でいえば『極嫌』の指導者だった」
そして、韓国メディアの関心はすでに「ポスト安倍」に移っている。朝鮮日報(8月13日付)「有力首相候補の石破茂『原発は維持、A級戦犯の合祀には反対』」では、後任候補8人を取り上げて分析している。石破茂、菅義偉、野田聖子、河野太郎、岸田文雄、加藤勝信、小渕優子、小泉進次郎氏の8人だ。それぞれ一長一短があり、韓国にとって誰が最適任か決めかねている。
ただし、先の朝鮮日報「コラム:萬物相 安倍の墜落」が、皮肉を込めて、こう結んでいるのは興味深い。
「文大統領が、今のように思う存分『竹槍歌』(竹槍を持って日本軍に反乱して玉砕した故事の歌)を歌い、『土着倭寇』(国内の親日派)批判を振り回せるのは、完全に安倍首相のおかげだ。『敵対的共生』のこの上ないパートナーというべきか。多くの専門家が『文在寅=安倍晋三の組み合わせでは、両国関係の改善は不可能』と展望してきた。どちらも国内政治に相手を利用するからだ。安倍首相の退場が韓日関係をどこに導くか気になるところだ」
日本の次期首相が誰になっても、今よりはよくなると言っているようだ。
(福田和郎)