氷山の一角、情報提供は「不正」に不安になった人だけ
【事例4】友人から「弁護士が代理で持続化給付金を申請してくれる」と言われた。
友人から「弁護士が代理で持続化給付金を申請してくれる」と言われ、事業者でもないのによいのかと思ったが、収入がない時だったので紹介してもらった。無料通話アプリで、申請に必要な身分証、源泉徴収、確定申告の電子申告に必要な利用者識別番号等を提出した。現在書類作成中で、これから申請が行われるが、不正行為だという記事を見た。まだ受給していないが、どうしたらよいか。相手が本当に弁護士なのかも不明で、連絡先もわからない。(20歳代、男性)
こうした事例でわかるとおり、持続化給付金の詐欺の場合、詐欺師に名義や個人情報を提供する「共犯者」の見返りとして100万円のうち20万円から30万円を受け取ることができるため、「被害相談」という形はほとんどない。「不正」に不安になった人が情報提供するケースがほとんどで、氷山の一角にとどまる。
8月に入り、全国の警察で摘発が相次いでいる。日本経済新聞(8月12日付)「持続化給付金詐取疑い 男3人逮捕、100人以上申請か」はこう報じている。
「国の持続化給付金100万円をうその申請でだまし取ったとして、兵庫県警は神戸市東灘区深江本町、会社役員、依田利大容疑者(48)ら男3人を詐欺の疑いで逮捕した。県警は100人以上の名義を使って、中小企業庁がインターネット上に開設した持続化給付金の申請ページで、うその内容を申し込み、申請を繰り返したとみて調べている。県警は詐取した金が暴力団に流れた疑いもあるとみている」
100人の名義を使って100万円ずつだまし取ったとすると、1億円以上荒稼ぎしたことになる。このほか、山梨県警や沖縄県警などでも詐欺グループの摘発が行われており、税理士が関与したケースもあった。
国民生活センターでは、
「持続化給付金の受給資格がない人は、受給できると持ちかけられても絶対に応じないでください。サラリーマンや学生、無職の人が自身を事業者と偽って申請・受給することは犯罪行為(詐欺罪)にあたります。あなた自身も罪に問われます」
と、警告している。
(福田和郎)