世界中で600件超 止まない医療従事者やコロナ患者への暴力行為や嫌がらせ

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   新型コロナウイルスの感染拡大が終息しないなか、医療従事者やコロナ患者への暴力行為や嫌がらせ、誹謗中傷が後を絶たない。

   赤十字国際委員会(ICRC)によると、世界保健機関(WHO)がパンデミック (世界的大流行)を宣言して以降の6か月で、医療従事者や患者、医療インフラに対する暴力行為や嫌がらせ、誹謗中傷が600件を超えている。

   勤務中に死傷した人道支援従事者に思いを馳せ、人々の救命や保護に尽力する医療従事者を称える2020年8月19日の世界人道デーに併せて発表した。

  • 新型コロナウイルス感染症を治療しているアフガニスタンの女性病棟(ICRC提供)
    新型コロナウイルス感染症を治療しているアフガニスタンの女性病棟(ICRC提供)
  • 新型コロナウイルス感染症を治療しているアフガニスタンの女性病棟(ICRC提供)

日本だけじゃない! 世界40か国以上で確認

   コロナ禍のなか、医療従事者やコロナ患者への暴力行為や嫌がらせ、誹謗中傷がはびこっているのは、日本だけではないようだ。ICRCは、4月から5月に世界中で起きた、こんな事件を報告している。

アフガニスタン
亡くなった患者の親族と医療従事者の殴り合いが原因で主要な隔離センターが半日閉鎖された。
バングラデシュ
コロナの検査で陽性判定を受けた医師の自宅に煉瓦が投げ込まれた。医師一家を町から追い出すのが目的とみられる。
中央アフリカ共和国
コロナ規制で身内の遺体を引き取れないことに腹を立てた複数の親族が、医療従事者に対して言葉や暴力を用いて攻撃した。
コロンビア
コロナの検査を受けるため町中に入ろうとした救急車を住民が妨害。非公開のカルテのほか、医療スタッフや患者の名前を盗み見る。
パキスタン
患者が新型コロナウイルス感染症で死亡した後、病院で複数の医師が言葉や暴力を用いた攻撃を受ける。遺族は、コロナウイルスはでっち上げだと叫びながら、院内の危険区域に侵入した。
フィリピン
医療従事者とその息子たちが近隣住民から嫌がらせや差別を受け、電気を止められた末に家を追われる。

「実際に私たちが把握しているよりも多くの攻撃が」

   ICRCには、20年2月1日から7月31日にかけて、611件の暴力行為や嫌がらせ、誹謗中傷が報告された。世界40か国以上で確認された611件のうち、暴行が20%超、不安から生じた差別が15%、言葉による攻撃や脅迫が15%を占めていた。

   ICRCは「心配なのは、実際に私たちが把握しているよりも多くの攻撃が行われていると考えられることです」としている。

   また事例報告にあるような、人をターゲットとした一連の事件のうち、67%が医療従事者、22.5%が負傷者や病人(感染が疑われた患者を含む)、5%が避難民や難民に向けられたものだった。

   ICRCでHealth Care in Danger 事業を率いるマーチェイ・ポルコウスキ氏は、

「コロナ禍が医療従事者の身の安全を脅かしています。その存在が最も必要とされているにもかかわらず、です。多くが侮辱や嫌がらせ、暴行を受けています。個人用防護具 (PPE)の不足と相まって恐怖が増幅され、医療従事者とその家族の心身に大きなストレスがかかっています」

   と語り、またICRCで保健部門を統括する医師のエスペランサ・マルチネス氏は、

「医療従事者やコロナ患者に対する暴力行為などの根本的な理由には、ウイルス感染症への基礎知識の欠如がある。コロナの感染原因や拡大の仕方、予防について正しい情報を発信することが重要だ」

   と指摘する。

   医療体制のひっ迫が数多くみられるなか、こうした攻撃は医療へのアクセスと医療サービスの提供の双方に壊滅的な影響を与える。ICRCは各国政府と自治体に対して、これらの事件の発生を助長する誤った情報に対処するとともに、すべての医療従事者が安心して働ける環境を整備するよう求めている。

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