2020年上半期(1~6月)の家電・IT市場の規模は、新型コロナウイルスの感染拡大による外出自粛の要請や家電量販店の一部休業などの影響を受けて3~4月は前年の販売金額を下回ったものの、一人当たり10万円の特別給付金の支給が進んだ6月は前年を大きく上回るなど、上半期を通じてはほぼ前年並みに踏ん張った。
市場調査のGfK ジャパン(東京都中野区)が8月20日、全国の有力家電・IT取扱店の販売実績データなどをもとに、家電・IT市場の販売動向を発表した。
家電・IT市場を製品別にみると、テレビの買い替え需要に支えられたAV関連、Windows7のサポート終了とテレワーク需要が追い風となったIT関連の製品は、前年の販売を上回った。その一方で、スマートフォンを中心とする電話関連やカメラ関連は、外出自粛の要請で春の商戦期を逸した影響が大きく、前年を大幅に下回った。
コロナ禍の影響も「10万円給付」が下支え
家電・IT市場のうち、2020年上半期のAV市場は、薄型テレビの好調な販売に加え、完全ワイヤレスイヤホンの伸長などにより、前年の販売金額を上回った。
薄型テレビの販売台数は、前年比14%増の300万台。エコポイント制度やアナログ停波による特需期に購入されたテレビの買い替え需要に加えて、コロナ禍の外出自粛でテレビの視聴機会が増えたことも、市場拡大の背景にあるとみられる。
4Kテレビの販売台数は前年比26%増で、薄型テレビに占める構成比は数量ベースで、前年から6%ポイント上昇の55%となった。加えて、大画面化の進展で薄型テレビのうち55インチ以上のモデルが占める構成比(数量ベース)は前年から5%ポイント増の21%となった。
4Kテレビや大画面テレビといった高価格製品の好調で、薄型テレビの平均価格(税別)は、前年から6%アップの8万3000円となった。
また、BDレコーダーの販売台数は前年比1%減の100万台。
ヘッドホン/ヘッドセットの販売本数は、前年比7%増の1040万本。完全ワイヤレス対応機は同63%増となり、構成比(数量ベース)では20%(前年比7%ポイント増)を占めた。そのうち、ノイズキャンセリング機能を搭載した製品の販売本数は前年の10倍以上と飛躍的に伸長した。メーカーの新規参入に伴い、モデル数が増加している。
テレコム市場では、携帯電話の販売が数量ベースで前年比24%減の1180万台となった。そのうちの9割強を占めるスマートフォン(ファブレット含む)は同23%減の1080万台、フィーチャーフォンは同35%減だった。新型コロナウイルスの感染拡大に伴う外出自粛ムードや家電量販店・携帯専門店の一部休業が販売減に拍車をかけた。
一方、スマートウォッチなどのウェアラブル端末は前年比40%増の120万本。端末の平均価格(税別)は前年から18%低下して2万5000円となった。
6月の猛暑でエアコン、冷蔵庫が売れた
生活家電市場は、新型コロナウイルスの感染拡大の影響を受けたものの、6月は連日の猛暑でエアコンや冷蔵庫の販売を伸ばし、前年の販売金額を上回った。
冷蔵庫は前年比2%増の230万台。需要期の6月は同27%増と好調で、上半期の販売を大きく押し上げた。6月は全国的に観測史上最高の猛暑を記録。故障による買い替えが進んだとみられる。平均価格は前年から2%上昇して前年から4%増えた。
洗濯機は前年比3%減の270万台。3~4月にかけて、新型コロナウイルスの影響を強く受けた。ただ、容量10キログラム以上の製品は引き続き好調で、数量ベースで前年比18%増の2ケタ成長。洗濯機に占める構成比は前年から5ポイント増えて26%に拡大した。
エアコンは前年比5%増の480万台。政府による緊急事態宣言が発令された4月の販売は不調だったが、5月以降は全国的に気温が平年を上回ったことが寄与して前年を上回った。
掃除機は前年並みの390万台。スティックタイプは前年比4%増、ロボットタイプは同8%増と堅調に推移した。従来のキャニスタータイプからスティックタイプへの需要の移行が進んだ。
テレワークや自宅学習で需要増もパソコンは減少
2020年上半期のIT・オフィス市場は、低調だった。パソコンは前年比12%減の770万台と伸び悩み。テレワークやオンライン授業での自宅学習の需要で好調なリテール市場の販売台数は同31%増の200万台。19年12月末から3月半ばにかけてのOS(マイクロソフトのWindows7/8.1)サポート終了に伴う買い替え需要もあった。一方で、リセラー(ディーラー、再販)市場はOSサポート終了に伴う買い替え需要の反動減で、2月以降は前年割れが続き、2ケタ減となった。
タブレット端末は前年比6%減の340万台。パソコンとタブレット端末を合わると、市場規模は前年比10%減の1100万台だった。
プリンター・複合機は前年比8%増の200万台。リテール市場は同12%増と6年ぶりに前年を上回った。テレワークや自宅学習の増加による需要拡大が追い風となった。
イメージング市場では、デジタルカメラが大苦戦。前年比48%減の60万台となった。新型コロナウイルスの感染拡大で、卒業式や入学式、旅行などのカメラを購入するきっかけとなるイベントの中止、規模の縮小が相次ぎ、前年を大幅に下回った。
コンパクトカメラが数量ベースで前年比49%減、一眼レフは同53%減、ミラーレス一眼は同42%減となった。交換レンズも、カメラの大幅な販売減を受けて前年比40%減の20万本だった。
GfK ジャパンでは、2020年下半期(7~12月)の市場規模は、昨年の消費増税前の駆け込み需要、Windows7のサポート終了に伴う需要があった期間との比較となるため、前年を下回ると見ている。また、2020年通年でも前年の販売をやや下回ると予想している。
なお、家電販売店などの販売形態をみると、外出自粛の要請以降、インターネット販売の伸びが加速。家電小売市場でのインターネット販売の構成比(金額ベース)は、上半期に前年を4%ポイントほど上回り、19%を超えた。