設定が古くて大げさでも、大ヒットする理由
そもそも半沢が、株価を操作しようと不正に手に入れた企業情報をマスコミにリークしたり、彼がもといた銀行の同期(及川光博演じる渡真利忍)が、銀行の内部事情を半沢に筒抜けにしていたり、ものすごい機密情報を飲食店内でべらべらしゃべっていたり......。
ところどころ「現代のコンプライアンス的には絶対NG」なエピソードはありますが、それも視聴者にはスッと受け入れられています。
なぜなら「半沢直樹」は、リアルな金融業界を映し出したドキュメンタリーではなく、金融業界を舞台にした「令和のニュービジネス歌舞伎」だから!
今作には、前回から引き続き、多くの歌舞伎役者が出演しています。香川照之演じる大和田暁、金融庁の黒崎役の片岡愛之助、半沢を恨み復習しようとする本部の証券部長、伊佐山泰二役の市川猿之助。また、Tシャツにデニムというラフな格好で、尾上松也がIT企業の社長、瀬名洋介役を好演しています。
こうした歌舞伎役者たちが、「顔芸」ともいわれる濃い演技を繰り広げているおかげで、半沢直樹は現代の「ニュー歌舞伎」として違和感なく受け入れられているのかもしれません。いわば金融ビジネスを扱う、ビジネスエンターテイメント歌舞伎なのです。
そういえば今作で悪役を演じた市川猿之助さんは、以前、大人気漫画を歌舞伎化した「ONE PIECE歌舞伎」でも話題になりました。自然な流れで、テレビドラマ「半沢直樹」でも「伝統と現代社会の融合」が起きているのです(......本当か!?)。
とにもかくにも、今後の展開がますます楽しみになってきました。半沢直樹、今作でも視聴率40%超えはあるでしょうか。(生野あん子)
◆ 日曜劇場 半沢直樹 ◆
TBS系。毎週日曜日21時から。主演は堺雅人。第1作は2013年7月7日から9月22日まで。2020年7月19日から、7年ぶりのシリーズ2作目が始まった。原作は池井戸潤。小説「半沢直樹」シリーズの「オレたちバブル入行組」「オレたち花のバブル組」(第1作)、「ロスジェネの逆襲」「銀翼のイカロス」(第2作)がベースになっている。
現在、子会社で出向先ある東京セントラル証券から東京中央銀行本部・営業第二部次長に復帰した半沢直樹(堺雅人)が、経営破たん寸前の帝国航空の再建という難しい大型案件に取り組んでいる。