「8年間で半年しか働かない私って、ずるいのでしょうか?」
会社の産休・育休制度を利用して2人の子どもを産んだうえ、今度は休業制度を使って夫の海外赴任に付いて行こうとしている女性がいる。
彼女が働いたのはトータル約8年間の在籍のうち、わずか半年間だけだ。そんな彼女に同期の子持ちママが言った。
「子を産む後輩女性の迷惑だよ。制度を利用するのは悪くないけど、ずるいよ」
グサリと刺さる言葉だった。女性はずるいのだろうか。女性の働き方に詳しい専門家に聞いた。
「あなたはずるくない。制度を利用するのは当然の権利」
話題になっているのは、女性向けのサイト「発言小町」(2020年6月30日付)に載った「私、ずるくないですよね?」というタイトルの投稿だ。
「大手企業に正社員として勤めています。第1子出産後に2年間育休を取得し、育休中に第2子妊娠がわかりました。そのため、復帰して半年働いた後、現在また育休を取得しています。来年の春には復帰予定でしたが、旦那が海外赴任になったため、社内の休職制度を利用して3年後くらいに復帰しようと思っています。大手企業だからこそ制度が整っており、感謝しています」
ところが、同じく2人の子持ちの同期に休職について話をしたところ、彼女は真顔でこう言ったというのだ。
「この8年間で半年しか働かないということだよね。育休を2回、しかも合計3年半以上取得したのだから、旦那の海外赴任に付いていかずに、きちんと復帰して働くという選択肢はないの? 育休だけ取って復帰しないのは、これから出産しようとする後輩たちに迷惑をかけると思うよ」投稿主はムッとして、「何も悪いことはしていないと思うけど?」
と言い返したら、同期の彼女に、
「悪くないけど、ずるいよね」と言われたというのだ。
私はずるいのでしょうか、同期が妬んでいるだけでしょうか? と悩んでいるのだった。
この投稿に対して、「あなたはずるくない。制度を利用するのは当然の権利だ」という意見が全体の3割ほどあった。
「あなたのようなパターンは仕方ないと思います。旦那さんの海外赴任なんて予想できません。ずるいと思ってしまう気持ちもわかりますが、それを本人に伝えてくる同期の人が残念」
「妊娠、出産、パートナーの仕事、親の介護など人生に起こることは、人によって違うからね。会社に利用できる制度があれば、ぜひ利用してください。そして、将来は会社に仕事で返してください。後輩に迷惑かけないって、そういうことだと思います」
「ちっともずるくないですよ。でも、人生の賭けに出たなとは思います。復帰後、小さなことでつまずくたびに、育休が長かったので使い物にならない、という評判が立ちそうです。制度を使うことには問題は何もありません。でも、制度利用はメリットだけではないということを認識しておく必要があります。復帰以降は人生の正念場になると思います。頑張ってください」
「8年も仕事から離れたら浦島太郎じゃないですか」
しかし、大半の人は「ずるい」「恨まれるよ」という意見が多かった。
「制度を使うだけ使って、やっちゃってる感があります。働くつもりで入社したのではないの、と思われても仕方ないのでは? 会社に負担させているのではなく、人に負担させていることを忘れずに! ツケを払う時は必ず来ます!」
「同期さんはとてもいい人。あなたは気づかいが足りない、同期さんはそこをハッキリと指摘してくれた。当方アメリカ在住ですが、こっちの企業でもあること。やはり、気をつかえる言葉、感謝の言葉があるほうが好まれます」
「恨まれるよ。休職制度って、旦那の海外赴任について行くからという理由で取得できるの? もし出来たとしても、同僚はその分割りを食うわけだし、あなたがいない間、派遣さんを雇っても帰ってくれば辞めさせられる。それまでスムーズに回っていた仕事が、突然復帰することで混乱するかもしれない。8年も経っていたら、浦島太郎じゃないですか。ずるいかどうかより、私なら怖くて無理」
また、夫の海外赴任に付いていくことは、「働く女性社員のイメージを下げている」という批判もあった。
「育休は本来男女で分担すべき。もし、海外赴任の辞令があなたに出たとき、夫は休職してあなたに付いていくのか。育休を夫婦のうち女性だけがとり、夫の海外赴任にあっさり付いていくなら、一人前の社員として雇用するなら男性を取りたい、と思わせるに十分ですものね。あなたのすることが女性社員のイメージを下げていると、同期さんが言われるのはもっともです」
(福田和郎)