秋以降のカギを握るのはワクチンと政府のデジタル化
みずほ総合研究所・経済調査部の酒井才介主任エコノミストは、内閣府発表より1ポイントいい、マイナス26.8%と予想していた。7月31日に発表したリポート「年率マイナス26.8%の大幅マイナス成長を予想(4~6月期1次QE)」の中で、今年12月までの長期展望を詳しく予測している。まず、7~9月期については、こう述べている。
「7~9月期は、国内の緊急事態宣言が解除され、主要国でロックダウンが緩和されたことを受け、プラス成長に戻る。消費・輸出を中心に年率二桁の伸びになる。個人消費は、感染再拡大への懸念が残るためサービス消費の回復ペースは引き続き緩慢なものとなるが、6月の持ち直しによるゲタの影響で7~9月期は高い伸びとなる。輸出は、海外のロックダウン解除に伴う需要の回復を受け、自動車関連を中心に増加が見込まれる。情報関連財も、自動車販売の持ち直しやリモートワーク需要を受けて回復する。ただし、米欧での設備投資需要の減少を受け、資本財輸出は弱含みが続くとみている」
そして、10~12月期の予測はこうだ。
「10~12月期以降の日本経済の回復ペースは緩慢なものとなる見通しだ。(1)企業収益の悪化を受けて賃金・設備投資の調整が進む(2)Withコロナ期は外食・旅行・娯楽などの消費活動が一部制限される(3)感染第二波を巡る不確実性が家計・企業の活動を委縮させることが主因だ」
「実際、日銀短観(6月調査)の経常利益計画をみると、上期はほぼ全業種で減益、下期も減益見込みの業種が多く、慎重な内容だ。多くの企業は、2020年度下期の企業活動がコロナ禍の前に戻ることはないと予想していることを示唆している」
その際、カギを握るのが、新型コロナウイルスのワクチンの普及と行政のデジタル化の推進だというのだ。
「治療薬・ワクチンの普及までに一定の時間を要するなか、経済活動の回復は緩やかなものとならざるを得ない。国内各地で感染者数が再び増加しており、先行き不透明感が高まっている。検査体制・医療体制の拡充が急務だ。同時に、政府は一刻も早く行政のデジタル化を推進し、経済対策を早期に執行できる体制を構築することが求められる。雇用調整助成金や特別定額給付金の支給を巡っては、行政のデジタル化の遅れが浮き彫りになった。政府は7月17日に骨太の方針を閣議決定し、『デジタル・ガバメントの断行』を政策の柱に位置付けた。今までの経済対策の執行を巡る混乱を教訓として、利用者目線に立ったデジタル化の進展を期待したい」
(福田和郎)