【尾藤克之のオススメ】精神科医が解説! 「父性消滅」のいまの時代をどう生きるのか!?

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本当に一人二役なのか?

   「海賊とは父性の象徴ではないか」――。樺沢さんは、15年以上前からずうっと考えていたそうです。

   海賊の持つ、力強さ、たくましさ、法の外で自由で振舞う自主性。「海の男」という言葉があるように、海賊が「男性的」「父性的」なものを象徴しているであろうことは、誰にも感覚的に理解できます。そして、ある瞬間からそれは確信に変わっていきます。

「米国で演劇『ピーター・パン』を見た時のことです。これは、少女ウェンディが現実世界から『ネバーランド』に行き、ピーター・パンと一緒にフック船長と戦い、冒険する物語です。フック船長の登場シーン。私はアッと思いました。ウェンディの父親、ジョージ・ダーリング氏を演じていた俳優が、フック船長を演じていたのです。父親とフック船長は一人二役でした」

と、樺沢さんは言います。

「なぜフック船長とウェンディの父親は、同じ俳優によって演じられているのか? それは海賊が父性の象徴だからです。物語はウェンディの主観で展開します。彼女にとっての父親(=父性)イメージが、海賊の頭領であるフック船長に投影されているのです」

   そう、指摘するのです。

   樺沢さんは

「2003年に製作された映画『ピーター・パン』(P.Jホーガン監督)。この中で、ジェイソン・アイザックスが、フック船長とウェンディの父親の二役を演じていました。日本では榊原郁恵主演のミュージカルが有名ですが、初演では、金田龍之介がフック船長と父親を一人二役で演じ、その後も川崎麻世、古田新太、鶴見辰吾などが、二役を演じています。2012年版は、ピーター・パンは高畑充希。フック船長役は武田真治ですが、やはり一人二役です」

と、指摘します。

「1924年の映画版で、別の俳優が演じていた、という例外のケースがあったものの、多くの場合、フック船長と父親は伝統的に一人が二役で演じるという「お約束」があるのです。フック船長とウェンディの父ダーリング氏は一人が二役を演じることが多い。それは、フック船長が、父親的イメージを持っていなければならないからです」

   かつての日本には昭和という「父性」の強い時代がありました。平成、令和へと移りゆくなかで、「父性」に求められる用件は変化してきています。

   ぜひ、みなさまの知的好奇心で、この本を最後まで読み込んでください(総ページ数420ページなので大変かも知れませんが)。樺沢さんの思考を追体験することで得られる貴重な学びがあるはずです。(尾藤克之)

尾藤 克之(びとう・かつゆき)
尾藤 克之(びとう・かつゆき)
コラムニスト、著述家、明治大学客員研究員。
議員秘書、コンサル、IT系上場企業等の役員を経て、現在は障害者支援団体の「アスカ王国」を運営。複数のニュースサイトに投稿。著書は『最後まで読みたくなる最強の文章術』(ソシム)など19冊。アメーバブログ「コラム秘伝のタレ」も連載中。
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