締め切りは、7月末までだった。
内定をいただいていた会社に「入社承諾書」を提出しなければいけない期限が、もうすぐそこまで迫っていた。けれども困った! わたしはまだ、他社の選考の真っ只中......。
できることなら、すべての企業の選考を終えてからじっくり考え、納得したうえで「心に決めた1社」にだけ入社承諾書を出したい。さて、どうしたものか......。
入社承諾書の提出後でも内定は辞退できるけど......
そもそも入社承諾書とは、「企業が出した内定を、学生が受け入れるかどうか、意思確認をするための書類」である。就活生が内定を承諾するか確認するための文書なので、内定承諾書と呼ばれることもある。そんな承諾書には、いったいどんな役割があるのだろうか。
わたし自身は、入社承諾書はものすごく「重い」ものだと思っていた。「この書類を一度提出してしまったら、絶対この会社に入らなきゃいけないんだよね?」くらいに思っていた。けれども、意外や意外。試しにネットで検索してみたら、そうでもないことがわかってきたのである。
「入社承諾書には法的な拘束力はないので、提出後でも内定辞退はできます!」
「そこまで重く考えなくて大丈夫!」
「とりあえず提出しておきましょう!」
入社承諾書について検索してみると、出てくるのはだいたいこんな感じの言葉。あ、世の中ではそんな感じの認識なのか。意外。わたしが深刻に考えすぎていただけか、と目からウロコだったのは言うまでもない。
それならば、ひとまず提出してしまおうか。就活における一つの作戦として、それもアリだとは思うのだ。とりあえず、入社承諾者を提出しておく。もし、現在進行形で選考中の会社と縁があったならば、一つ目の会社は辞退する。うん。とても賢い作戦だと思う。もし、選考中の会社がうまくいかなくても、しれっとそのまま一つ目の会社に入社することができる。リスクが少ない。
......いや、でもなあ。いくら法的な拘束力がないとは言え、自分の署名、捺印まで求められる入社承諾書を提出したあとに、「やっぱり違う会社に入社しま~す」なんてことになったら、とても気が引ける。
それに、せっかく内定を出してくれた企業に対しても誠実ではない。良くも悪くもバカ正直なわたしとしては、後々「ノー」と言う可能性があるのに、「とりあえずイエス」と言うのは難題だった。