「施されたら施し返す。恩返しです」!
ところで、今回のシリーズを前に半沢直樹を演じる主演の堺雅人さんが、スポーツ紙のインタビューでこんなことを言っていたようです。「今作のポイントのひとつは『恩返し』です。ある人のセリフに出てくるので注目してください」と。さっそく、放送初回に前回シリーズで半沢の最大のライバル役となった香川照之さん演じる大和田専務の頭取に対する言葉として、「施されたら施し返す。恩返しです」というセリフが登場しました。そして、第3回には主人公の半沢直樹が、部下に対してこんなことを言っています。
「いいか忘れるな。大事なのは感謝と恩返しだ。これまでの出会いと出来事に感謝をし、その恩返しのつもりで仕事をする。そうすれば、必ず明るい未来が拓けるはずだ」
クライマックス場面での主人公のセリフに登場するに至って、前回の「倍返し」のように流行語になるか否かは別としても、キーワード「恩返し」は確実に視聴者に刷り込まれつつあるように思います。
元銀行員の私などは主人公のこの言葉を聞いて、金融機関と「恩返し」の浅からぬ関わりを思い起こさせられるエピソードを思い出していました。
1990年代後半、銀行界が不良債権問題に端を発し金融危機に陥った際に、私の勤務先銀行も預金の流出が止まらず、このままでは最悪経営破たん、少なくとも大手行への吸収合併は免れ得ない、そんな澱んだ空気に包まれていました。
バブル期に2000円を超えていた株価はすでに200円台前半。200円を割り込んだら危険水域といわれ、株価維持に向け取引先への持ち株買い増しのお願いが、私が所属していた営業管理部門の大きな課題になっていました。
そんな折に、銀行の地元から遠く離れた北関東の優良取引先企業M社が、銀行の困窮状態を聞きつけ、数度にわたって株を買い支えてくれたのでした。もしこの大量買い支えがなければ株価は200円を割り込み、他の破たん金融機関と同じく一気に売り相場に巻き込まれ実質破たん状態に追い込まれていたのではないかと、今さらながらに背筋が寒くなる思いがします。