【投資の着眼点】WHOテドロス事務局長「コロナ特効薬ないかも」で株価はどうなる?

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   現在、新型コロナウイルスの感染拡大が世界経済に多大な影響を与えており、株式市場の動向も少なからず、その煽りを受けている。

   世界経済の急激な減速懸念から、日経平均株価は2020年3月に年初来高値から一時30%を超える下落。しかし、株式市場は3月に大底をつけて、劇的な回復相場の到来となった。

   その後はワクチンの開発期待から、2020年第2四半期は東証マザーズ市場に上場する多くの医薬品(バイオ)銘柄に「買い」が殺到した。これを受け、東証マザーズ指数は記録的な上昇となっている。

  • 新型コロナウイルスに「特効薬」はないかも……(国立感染症研究所提供)
    新型コロナウイルスに「特効薬」はないかも……(国立感染症研究所提供)
  • 新型コロナウイルスに「特効薬」はないかも……(国立感染症研究所提供)

「一本鎖RNA」を持つ新型コロナウイルスは厄介だ

   ここ数か月は極めて楽観的に推移してきた株式市場だが、その一方で新型コロナウイルスによる市場への脅威は、国内外の「感染第2波」の様相とあいまって、完全に拭い去ったわけではない。

   8月3日、世界保健機関(WHO)のテドロス事務局長は、新型コロナウイルスの感染拡大に関して、記者会見で「特効薬は現時点ではなく、今後も存在しない可能性がある」と発言した。

   「今後も存在しない『可能性』がある」と発言しただけなので、文字どおりに解釈すれば、ありふれた発言なのかもしれない。しかし、テドロス事務局長の発言以前にも、医療関係者や各調査機関から「新型コロナウイルスは、特効薬の開発が困難な可能性がある」といった懸念はあったようだ。

   東京大学保健センターによると、コロナウイルスは「一本鎖RNA」という核酸(遺伝子を備える)を持ち、多くの生物やDNAウイルスと異なる遺伝の仕組みを有しているという。

   ところで、新型コロナウイルスと同様に「一本鎖RNA」を持つウイルスで有名なものに、HIVウイルスなどがある。これらのウイルスは「RNAウイルス」と呼ばれ、遺伝子の変異速度が極めて早いものが多いことが知られている。

   では、遺伝子の変異速度が早いと、何が問題となるのだろうか――。一つは、ワクチンの開発が極めて困難になる場合があるということだ。

   治療薬やワクチンは多くの場合、ウイルスが作るタンパク質を攻撃目標とする。しかし、遺伝子が変異すると、ウイルスが作るタンパク質の構造も、一緒に変化してしまう可能性がある。つまり、変異したウイルスの出現によってワクチンの効果が弱まるか、なくなることもあるということだ。

テドロス発言の真意は?

   これまでのところ、新型コロナウイルスはいくつかの遺伝子型があることが確認されている。それらの複数の型に対応できる特効薬が求められている、ということなのだろうか。

   新型コロナウイルスの特効薬の開発が難しいかもしれないという見方は、確かに存在しているようだ。しかし、悪いニュースばかりではない。

   厚生労働省の発表によると、2020年1月から4月にかけて、過去の統計から予想される死者数を上回った死者数を示す「超過死亡」が確認されたのは、栃木、埼玉、千葉、東京、徳島の5都道府県で、その合計は138人(EuroMONOアルゴリズム、速報補正ありの推定値)だった。

   上記を除いた42都道府県では、「超過死亡」は確認されなかった。

   外出自粛に伴う交通事故の件数減少の影響が否定できないという指摘はあるが、こうした推定値は、現時点で新型コロナウイルスによる死者数の増加が限定的である、という解釈もできるのだろう。

   むろん、テドロス事務局長の発言で、特効薬開発の望みが絶たれたわけではない。テドロス事務局長の発言は「すべてのウイルスが、特効薬によって対処できるわけではない」という、当たり前のことを言っただけなのかもしれない。だが、製薬メーカーの株価をチェックしている人は、今後の動向が気になるところだろう。

   また、株価指数は景気動向指数の中で先行指数に分類されているので、株価の推移を確認することは今後の景況判断に役に立つかもしれない。そして何よりも、感染拡大による混乱が落ち着くまで、感染予防のための手洗い・うがいの励行や、「3密」の回避を心掛けたいものだ。(ブラックスワン)

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